メディアへの寄稿履歴 常識破りの功罪

【2015年8月19日 南日本新聞 ”南天” 掲載】
もう7,8年昔のことになるが、会計人のグループで「経営革新支援」のテキストを作成したことがある。全国から10人ほどの税理士が毎月東京に集合して議論を重ね、1冊のテキストを作り上げた。
この時、何回も壁にぶち当たったわれわれは、型通りの会議を打ち切って、各人のアイデアをホワイトボードに書きなぐってみた。書記役を引き受けた私は、みんなから出るアイデアを目いっぱい書きまくったのである。ここから会議が大きく前進し始め、出来上がったテキストはその年、全国のセミナーで使用された。
先日、当時のメンバーが京都に集まってOB会を開いた。われわれが力を注いだテキストはその後プロトタイプとなり、基本的には今でも使われている。「若手が次のコンセプトを打ち出せないんだったら、また俺たちで作ろうぜ」などと気炎を上げて、大いに盛り上がった。
2年ほど前、別の会計人の会でこれに近い経験をした。新しい経営支援のコンテンツを作ろうということになり、何回か会議に出席したが、肝心の中身がちっとも前に進まない。業を煮やした私はある日、以前と同じようにホワイトボードを貸してもらい、板面いっぱいに企画の骨子を書いた。新たな発想を引出したかったからである。
しかしながら、私の試みは全く黙殺されてしまった。どうも「会議の進め方」にガチガチの決まりごとがあり、私は「不規則発言」をしたようなのだ。新しいコンテンツを作らなきゃならないのに、「これまでの常識や形式」のみで対処している。だから前に進むわけがない。
必要に迫られて新規のコンセプトやアイデアを出さなければならない時は、それまでの常識や形式、やり方を大胆に変えなければ、新しいものなど出てくる道理がないのだ。ここのところは、現状打破が要請されているあらゆる分野、業界においても心しなければならない大事なポイントであろう。