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連載コラム MCコラム第272話 行動を変えることの効果―脳の活性化のためにもインプット型からアウトプット型へ―  

 

医師の和田秀樹先生はその著書の多さでも有名な方ですので、名前をご存知の方も多いと思います。精神科医である和田医師は「脳」に関する知見も深く、その著書の中で詳しく解説されています。

和田医師は、彼の著書の中で、「脳」の中の「前頭葉」について触れておられました。

「前頭葉」とは、大脳の前方部分のことで、思考や創造、意欲、理性などに関わっている部分です。この部分が衰えてくると、意欲ややる気が低下し、感情のコントロールが効かなくなるなどの兆候が表れてくるそうです。

ところが、この「前頭葉」の萎縮は、40代からすでに始まっていて、放っておけばどんどん進んで、50代、60代くらいから、思い込みが激しくなってきたり、頑固になってきたりという傾向が少しずつ出てくるのだそうです。

 

私はこの仕事(コンサルタント)を選んでいる以上、お相手するのは経営者であり、そのほとんどが40代、50代、或いは60代ということになります。社長が30代というのは珍しいケースです。

さて、その40代、50代から「前頭葉」の委縮は始まっているということですが、私としては、社長のやる気が低下したり、感情のコントロールが効かなくなったりしたのでは困ったことになります。

経営者には、できるだけ身体も元気で、精神も若々しく柔軟でチャレンジ精神に溢れていていただきたいと思っています。

そのためには、上記のような、年齢による衰えが、一般的に言われているようなペースで進んでいかないことを願うばかりです。社長さんたちに限らず私を含めて、「前頭葉」を活性化し、脳が老化しないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。

 

和田医師はその解決策として、生活が単調にならないように心掛けることをお勧めしておられます。

経営者であれば、いつも同じメンバーの会合にしか出ないとか、ゴルフも決まった顔ぶれの仲間としかしないとか、通っているのは馴染みの店ばかりとかではなく、たまには目先を変えてみる「変化」が必要だといわれます。ちょっとしたことでもいいので、新しい体験を生活に組み入れることが、脳を活性化させるようなのです。

しかし、変遷の激しい現代において、懸命に仕事に取り組んでいれば、特に現役経営者の場合、あえて意図的に「変化」を求めなくても、ちょっとした「変化」の洗礼は日常的に受けているものと考えられます。

その点では、経営者は一般のビジネスマンに比べて、はるかに「変化」に富んだ日常を送っているのではないでしょうか。

さて、そんな立場の経営者ですから、そのポジションに相応しいさらに上位レベルの「脳の活性化」を行なう必要がありそうです。

現役経営者に相応しいレベルの「脳の活性化」を実践する手段というのは他にないものでしょうか。

 

その点について、和田医師は次のように述べておられます。

―前頭葉の老化を防ぐためには、「アウトプット型」の勉強スタイルに意識して変えていくということも効果的です。(中略)

残念ながら、一人で読書に勤しむような自学スタイルは、前頭葉の老化を防ぐという面では役に立ちません。―

これは私にとって、意外な見解でした。読書や独学での研究といった行為は、「脳」を衰えさせないためにはかなり効果的だろう、と思っていたからです。しかしながら、それだけでは、少なくとも「思考や創造、意欲、理性などに関わっている前頭葉」の活性化には、あまり役に立たないようです。一方で、和田医師は解決策も示されていました。それが前述の「アウトプット」です。

この点について、和田医師はさらに次のように述べておられます。

―本を読んでインプットする行為よりも、会話などのアウトプットの行為のほうが前頭葉は活性化され、老化の防止になるのです。(中略)

「会話」は日常的なアウトプットのもっとも手軽なものでしょう。多弁である必要はありませんが、誰かと日常的に会話する機会がよくある人は、前頭葉の老化を遅らせ、歳をとっても若々しく、意欲的な人が多いものです。―

ここで和田医師は、「会話」の効用について述べられています。確かに「会話」というのは、日常生活の中の最も身近なアウトプットといえます。しかし、あまりにも身近で簡易なアウトプット行為であるため、それが、読書や研究といった行為に勝る脳への活性化要素であるというのは、ちょっと意外な事実と言っていいでしょう。

とはいえ、この「会話」にしても、脳を活性化させるには一定の条件があるようです。

その点について、和田医師は次のように述べておられます。

―ときどき、「○○という本に、こう書いてあった。」、「○○という評論家が、こう言っていた」といったような、知識をそのまま語るだけの人がいますが、それでは前頭葉は活性化されません。

得た知識を、これまでの経験や他の知識を使って加工し、「自分の考え」として述べるときに前頭葉は活性化されるのです。―

この見解もまさに、普段私が申し上げているアウトプットの条件と一致します。

私は、インプットされた情報を、アウトプットにまで持っていくためには、それを咀嚼し理解し自分の中で組み立て直す必要があるのだ、と主張してきました。

つまり、アウトプットを前提にしたインプットは、初めからそれを自分独自の血肉としなければならないという、大きな意味を持たすことになります。

だから、アウトプットする習慣を身につけることには、経営者としてのキャリアアップに大きな意義があるのだ、と述べてきたわけです。

 

和田医師は、医師としての立場で、一人の人間が脳の機能を衰えさせないためにはどうしたらいいか、という見解を述べられています。その極めて効果的な日常習慣がアウトプットであると言われているのです。「脳の機能維持」と「経営者のキャリアアップ」と、目的はやや異なりますが、アウトプットが、どちらにもかなり効果的であるという点では、私と和田医師との見解は一致しています。

経営者は一般のビジネスマン以上に勉強し、いろいろなことをインプットする必要がありますが、それを本当の意味で自分のものとし、経営に活かすためには学んだことを「情報発信(アウトプット)」することが、近道であり、深い理解にもつながるのです。

それは「会話」といった軽いアウトプットだけではなく、文章化したり映像化したりすることで、より本質的な意味で身についていきます。

医学的にも証明されている「情報発信(アウトプット)」の効果を信じて、是非様々な方法でチャレンジしてみてください。