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連載コラム MCコラム第276話 自分棚卸しを実践してみる―「立ち止まる」ことの意義―

 

これは以前、自社のHP(ホームページ)をリニューアルしたときの話です。

― これまでのHPをリニューアルすることになりました。この試みについては、社内で制作委員会まで作って取り掛かったのですが、私も自分が担当した原稿を夜遅くまでコツコツと書きました。

私の担当は自らのプロフィールとマーケティング部門の解説です。プロフィールはHP用とブログ用の2種類を作らなければならず、それぞれ少し表現や内容を変えましたので結構なボリュームになりました。

 

さてこれらの原稿を書きながら、改めて自分や会社の業務を振り返ってみると、思ったよりもいろいろなことに取り組んでいたことに気がつきました。整理してみると結構あれこれチャレンジしているのです。もちろん失敗も有れば、成功も有り、どっちつかずだった案件も有り、と様々なのですが、少なくとも私や会社を知っていただくためにご紹介できる情報はそこそこあるもんだなあと実感しました。

 

以前、HPの活用について専門家に意見を聞いたときも、ブログを始める前に解説書を読んだときも、「情報のオープン化」ということを言われました。「外に向かって自分や自分のビジネスをアピールしたいのであれば、格好や体裁にこだわらずこちら側の情報をできるだけ発信しなければだめですよ。」といわれたのです。そこで、特にブログの自己紹介では失敗談まで含めていろいろとご紹介することにしました。会社のHPの方は若干ビジネスよりの傾向を強くして、内容も硬めのものにしました。

 

いずれにしても、私なり会社なりを知っていただくためにと取り組んだことですが、思ったのは「ときどきこうやって棚卸しをやってみなければいかんなあ」ということです。日常業務の中で、当たり前と思ってやっていること、普通と思っているノウハウ、これらのものもきちんとお知らせすることで、案外ビジネス上の接点が新たにみいだせるかも知れないなと思ったのです。

 

さて、私の原稿を含めてHP(ホームページ)リニューアル委員会で最終検討を行ないました。HP冒頭のキャッチコピー、ボディーコピーをはじめ、業務案内をより詳しくするために各担当者に書いてもらった案内文、それらのレイアウトデザイン案などについて若手中心のメンバーと話し合いました。

 

前述のように、あらためて発信したい情報を全体的に整理しますと、相当なボリュームになります。今まで私達は「こんなことお知らせしても仕方がないだろう」とか「こんなことみんなもう知っているだろう」とか「どうせ興味ないだろう」とかの予見をもって情報発信を怠ってきました。

 

しかし、こんなふうに思うのはこちら側の勝手な理屈です。「世の中には様々なニーズがあって、何が引っかかってくるのかは分からないのだ。」と考えた方がきっと正しいのではないかと判断しました。

 

また、業界の用語も、こちら側はよく理解しているので、知らず知らずのうちに当たり前のように使っていることがあります。しかし、これは自分でも体験することなのですが、業界用語や専門用語といったものは、素人にはさっぱり通じないことがほとんどです。したがって、キーワード解説機能も付けようということになりました。イメージとしては多重階層にしてより詳細な情報にアプローチできるように作り込んでいきたい、といったところです。―

 

 

以上が、かなり昔、HPを2回目か3回目リニューアルしたとき書いた文章です。その内容は、「初歩的なことを考えていたんだなあ・・・」と思う部分もあれば、「今も、同じような課題は解決に至らないまま継続しているよなあ・・・」と思う部分もあります。

 

ここで、考えるべき課題は2点です。

一つは、経営者が自分の業務を「棚卸し」してみるということです。

私も何度か「棚卸し」をしてきましたが、改めて見直すことで気づかされる自分の仕事、というものがあるものです。

「そうか!こんなことに取り組むようになっていたんだ。」とか「いつの間にか、以前のやり方からかなり変貌していたんだ。」とかいった発見は、「棚卸し」という形で見直してみなければなかなか気づくことはありません。

しかも、こういった「立ち止まってみる」という行為は、未来につなげていく、という点において重要な意味を持ちます。

特に「以前のやり方がかなり変貌していた」という発見は、これをさらに進化充実させることで、新たな商品開発のきっかけにもなるからです。このように、仕事の流れをロジカルに整理して精査している経営者はまだ少数派と言えましょう。ビジネスを時代に合わせていくという、未来志向においても、この「ちょっと立ち止まって過去を振り返ってみる『業務の棚卸し』という行為」には重要な意味があると思います。

 

2点目は、「棚卸し」を含めて、振り返ってみた自社の業務を、いろいろな形で「情報発信(アウトプット)」していくということです。

このレベルまで実践している経営者はほとんどいません。何故でしょうか。

ここがおろそかになる要因には、また二つの考え方というか思い込みがあります。

それは「情報を出したら不利になるのではないか。」という思い込みと「そんなことにどれほど意味があるのか?」という疑念です。

特に前者の場合、古いタイプの経営者にその考えの人が多く、「自社の事情やノウハウはできるだけ秘匿するものだ。」という考えに凝り固まっています。もちろん、自社の持つ特許的なノウハウや技術といったものの詳細をオープンにする必要などありませんが、それを持っていることやそれを駆使して上質の商材やサービスが提供できるということは、積極的にアピールしなければ市場に伝わりません。その辺のさじ加減というか、アピールのテクニックといったものが、日本企業、とりわけ地方の中小企業には不足しているといえましょう。

また、後者の「そんなことにどれほど意味があるのか?」という考え方の経営者は、現代の情報社会の特質というものがわかっていません。

我が社の存在を知ってもらえなければ、そもそも商機は0(ゼロ)です。

相手(市場)にとって、存在していないのと同じことになります。自らの存在やその内容を知られてこそ、初めて市場は反応してくれるのです。地縁血縁社会で長く商売を続けてきた経営者には、このごくシンプルな原理をわかっていない人が多すぎます。

 

だいぶ前に行なったHPのリニューアルの際に書いた文章を見直してみて、現在でも変わらぬ課題が存在しているなあ、とつくづく感じます。私は、こういった課題の解決を目指して、この執筆のあと、「情報発信(アウトプット)」のコンサルティングを専門とする現在の法人を設立しました。この課題への取り組み、まだまだ終わることはなさそうです。