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連載コラム MCコラム第258話 経営者は、なぜ先見的でなければならないのか―「先回り」が必須の時代―  

 

経営者に必要な資質の一つに「先見性」ということがよく言われます。

何故「先見性」はそれほど必要なのでしょうか。

これには

「それはいうまでもなく、常に時代を先取り先取りしていなければ、ビジネスにおいて「遅れ」を取ることになる。したがって、そうならないように先を見据えておく必要があるからだろう。」

といった答えが返ってくるのではないでしょうか。

 

そうです。まさにその通りなのですが、それではそんな風に実践している経営者がどれだけいるでしょうか。

おそらく、頭でわかっていても、「先見的経営」を実践している経営者はいくらもいないと思います。

それは何故でしょうか。

 

原因は2つあると思います。

1つは、まず「先見的」といわれる中身そのものを発見できない、思いつかないということがあります。

「先見性」がいくら必要といわれても、それが何なのかを見つけ出すのは、それほど簡単なことではありません。普段から、そういう視点で物事を観るクセをつけて、なおかつ、「これだ!」と思ったときは、それがいずれ来るだろう、という当たりをつけなければなりません。そしてそれに対処すべく準備を始めるわけですが、そうやって「先見的」なことを発見し、確信的に自身に落とし込める経営者は、そんなにはいないのではないでしょうか。

 

もう一つは、ある程度「先見性」の確信が持てたとしても、それを実践することの難しさです。

本当に「先見的」であれば、原則として前例はありませんので、世の中にお手本というものが存在しないことになります。

つまり、すべて手探りで行なわなければなりません。

そのリスクと投下するエネルギーの大きさを考えれば、普通は二の足を踏むことになるのです。

 

以上のような理由をもって「先見的経営」の実践者は、極めて少数しかいないわけですが、ここで再び冒頭の「何故、先見的経営は必要なのか。」の問題に立ち返りたいと思います。その解答は「常に時代を先取りしていなければ、ビジネスにおいて「遅れ」を取ることになる。そうならないように先を見据えておく必要があるから。」というものでした。そうはいっても、現実的には実践まで持っていくことは難しい、ということは先述した通りです。

 

ただ、そういう事情があるからといって、「先見的経営」に手をこまねいていたらどういうことになるのでしょうか。経営者が先見的であってもなくても、世の中は動きを止めるわけではありません。

特に現代社会は、常にかなりの勢いで変化しています。

つまり、我が社が動きを止めていたとしても、周りのビジネス環境はどんどん変化しているのです。

やがてその大きな流れには、どうしても合わせていかざるを得なくなります。

 

そういった流れに合わせることが、後手後手に回った場合、先見経営の逆、つまり、世の中の変化を常に後ろから追っかける経営になってしまうのです。

原則、世の中の流れに合わせることを拒絶することはできません。例えば、世の中のビジネスが、インターネットを中心に大きく動き始めたとき、「ネットは嫌いだ。」と、我が社だけが抵抗することは不可能です。どうしても自社のビジネスも、ネット社会に照準を合わせた経営に切り替えていかざるを得ません。そこで抵抗を試みたところで無駄であるばかりか、それが当たり前の世界になったビジネス社会からスポイルされることになるのです。

 

つまり「先見的経営」を選択するか否かというのは、常に時代を追いかける側に回るのか、先回りして時代を受け止める側に回るのか、を選ぶことになります。

追いかける側で別にかまわない、他人の後追いでもいいからゆっくりとビジネスを進めればいいや、という人はそうすればいいと思います。ただし、この方針では、おそらく常に「価格競争」のような、その他大勢が巻き込まれるタイプの消耗戦的競争のビジネスに終始することになります。

 

そもそも「価格競争」は、過当競争などで商売が頭打ちになったとき、誰かが先鞭をつけて始めるものです。それが始まれば、あとはお互いの値下げ合戦の追いかけっこが待っているだけです。つまりここでも、追いかけるタイプのビジネスしかできないことになるのです。

 

「先見的経営」といっても、常に時代を先取りし先頭に立っていなければならない、ということではありません。第一線のフロントランナーであらねばならない、ということではないのです。

もちろん、しっかりとした「読み」の上に、万全の準備をしておくに越したことはありませんが、常に「意識しておく」だけでも、かなり違った展開を期待することができます

 

どういうことかといえば、「先見的経営」を心掛けておくだけで、時代が大きく変化したときに慌てないで済むからです。

ほとんどの経営者は、基本的に保守的であり、時代の変化を柔軟に受け止めることができません。今までの考え方ややり方を、できるだけ踏襲しようとします。

しかし、「先見的」であることを常に意識していれば、「変化」するのは当たり前のこととして、意識の中に織り込み済みなので、慌てることがないのです。

 

つまり「先見的経営」の必要性は、冒頭で述べた「常に時代を先取りしていなければ、ビジネスにおいて「遅れ」を取ることになるので、そうならないように先を見据えておく必要があるから。」という直接的な理由以外に、「そうなったときに慌てなくて済む」という間接的な理由もあるのです。

 

時代の変化を仕方なくあとから追いかけるだけの経営になるのか、先見的であるがゆえに、常に時代の変化に対し落ち着いて対処できる経営になるのか、これは経営者の選択次第といえます。

私自身はもちろん後者であることを心掛けています。

何故なら、その方が適度な緊張感もあり、ワクワクすることが多く、事業を推進していて楽しいからにほかなりません。