• 〒106-0047 東京都港区南麻布一丁目9番8-711号
  • TEL : 099-473-3190

連載コラム MCコラム第230話 社長は「条件」で選ばれていますか?それとも「共感」で選ばれていますか?―「情報発信(アウトプット)」が持つもう一つの大きな効用―

 

 

先日、私のコンサルティングを受けておられる或る地方企業の社長さんに言われたことです。

「先生の言われるように、地方にも「情報発信(アウトプット)」に熱心な企業がありますな。○○株式会社などはテレビコマーシャルも結構頻繁に流れていますから、ああいう企業は、地元では名前が知られていて、人を募集するときにもきっと有利なんでしょうなあ。」

 

その企業のCMは、私もテレビで何回か見たことがあり、確かに地方の一企業としては頑張っているようでした。そういう意味では、地域の中で名前もそこそこ知られており、上記の社長さんの発言はその通りだと思います。

 

ただ、その解釈は、私のそれとは少しズレがあるなあと感じたのです。

それは、私がお勧めする「情報発信(アウトプット)」と広告宣伝の一つであるテレビCMとの間には、似ているようで大きな違いが存在するからです。

その点を、今回上記の社長さんが触れられていた「人の募集」即ちリクルートにおいて、どのように異なるのか述べてみたいと思います。

 

現在、リクルートに際しては、どの地方企業も結構苦労しているのではないでしょうか。思うような人材が取れない、なかなか応募してこない、せっかく就職してもすぐ辞めてしまう、といったような悩みは全国共通のものだと思います。そのような状況の中、上記で言われたように、地方においてもちょっとがんばってテレビCMなど打っていれば、ほかの企業よりは募集のときに有利なのではないか、と考えるのは無理もないことです。おそらくその効果はそれなりにあると思います。

 

ただ、リクルートにテーマを絞った場合、費用対効果の点では地方の一企業にとって、その負担はそれほど少ないものではありません。

もちろん、広告宣伝には商材そのものを売り込むといった大きな役割があります。

費用と効果の関係については、販売促進効果、企業イメージアップ効果、リクルート情報発信効果など、もっと包括的に考えなければならないのです。

 

ここで大事なことは、CMというのは、通常その企業の売りたい商材をアピールすること、即ち販売促進が本来の役割である、ということです。

そっちが本来の役割であり、リクルートに有利といったような間接的な効果を狙うためのものではありません。

つまり、地方のそこまで規模の大きくない企業にとって、リクルートという点では、費用の負担と狙った効果との相関性はあまり高くはない、ということになります。

 

それでは、リクルートに悩む地方企業において、いい人材、有用な人材を確保するには、どのようなアクションを起こせばいいのでしょうか。

 

私は、そこがまさに「情報発信(アウトプット)」にかかっていると思うのです。

「情報発信(アウトプット)」をマメに的確に行なっていれば、自社企業情報は他の企業に比べて格段に強く世の中に伝わることになります。まず、こちらの存在や特徴、方針など様々な情報が世間に伝わらないことには、就職希望者も応募の動機がつかめません。

 

ここでさらに大切なことがあります。

それは就職希望者の「応募の動機」が、「条件」だけではなくなるということです。

世間の経営者の方は、若い人が我が社に応募してくる動機は何が一番だとお考えでしょうか。

第1に考えるのは、おそらく「条件」ではないかと思います。

給料がいくらで、休みや福利厚生がどうなっていて・・・・といった条件を吟味して選んでくるのだろう、とお考えではないかと思います。

 

もちろん、それもかなり大事な要素ではありますが、それだけではありません。

今の若い人の中には、「社会にいかに貢献できるか。」「その貢献によって、自分の人生にどれだけ充実感が得られるか。」といった観点で選ぶ人も多くいるのです。

現代の若者は、みんながみんなそれほどドライなわけではありません。

しかしながら、そういった若い人の心理や志向に寄り添ったところの的確な情報を出している企業は驚くほど少ないといえましょう。

そういった努力は、むしろ企業側の方が怠っているといってもいいのです。

 

給与や福利厚生その他労働条件等については整備されている方がいいに決まっていますが、それだけではない、ということなのです。

そういった「条件」の提示に匹敵するくらい、いやそれ以上に「共感」を得るための仕掛けが必要なのです。

「仕掛け」といっても、何か特別なことをするわけではなく、マメな「情報発信(アウトプット)」によって、自社の方向性や考え方、信条といったものを、世の中に常に問う姿勢を見せていれば、自然に共感する人間は集まってくるはずです。

 

当たり前のことですが、そういった方向性や信条といったものは、多くの人間の共感を得やすく魅力的なものでなければなりませんが。

おそらく、この「情報発信(アウトプット)」によるプラス効果は、経営者の方が考えている以上に大きいものだと私は考えています。

 

現に私がコンサルティング会社とは別に経営する会計事務所においては、地方にもかかわらず、リクルートにそれほど苦労したことはありません。現在、働いているスタッフも、地方にしては比較的いい人材が集まってくれている、と思っています。彼らは応募の際に間違いなく事務所のHP(ホームページ)を見ています。おそらくそこで、事務所の基本的な方針や姿勢、私の考え方などを把握しているはずです。

 

中には、私のブログを読んで、事務所の方針に共感を覚えてくれる人などもいます。また、そういった人材は雇用したあとも、仕事に対する姿勢などベースの共有が既に成されていますので、一緒に働きやすいことも事実です。

このように「情報発信(アウトプット)」というのは、リクルートにおいても大きな力を発揮することは間違いありません。

 

社長の会社は「条件」で選ばれていますか?それとも「共感」で選ばれていますか?・・・

この問いに対する答えは、少し深く考えてみる必要がありそうです。もし「共感」で選ばれることができれば、それは「条件」で我が社を選んだ人よりも格段に一緒に働きやすい人材であることは間違いありません。そういった人材を一人でも多く確保するためにも「情報発信(アウトプット)」に真剣に取り組んでみませんか。