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連載コラム MCコラム第119話 社長の語るストーリーは「情報発信」の要(かなめ)―「物語」の数だけ「引き出し」は増える―  

 

ラジオの生放送が終わってホッと一息。

 

 

 

かなり昔のことになりますが、なにかの講演で次のような言葉を聞いたことがあります。

―若いときの旅がなければ、老いてからの物語がない―

私は、この言葉には強烈に心を動かされました。そのため、その後何回か自分の講演やコラムなどのテーマに取り上げたほどです。改めてこの言葉の言わんとする意味を考えてみたいと思います。

 

若いときの旅・・・これはすなわち、仕事の最前線で現役バリバリに働いていた頃のことを表わしている言葉とも取れます。仕事上の体験、経験キャリアをリアルタイムで積み重ねていたときのことです。ただその時点では、これらの体験はまだ「生もの」であり、とれたての食材のようなもので、客観的に表現できるものではありません。

 

老いてからの物語・・・この言葉だけですと、「老人の繰り言」「単なる昔話」的な捉え方になりそうですが、「若いときの旅・・」という言葉とペアになればまた意味が違ってきます。それは先述の「まだ生ものだった食材」が、時を経て熟成され吟味され、外に向かって伝えられるだけの形ある「料理」に仕上がってきた、と解釈することもできるのではないでしょうか。

 

若いときはまだ生々しすぎて手をつけかねていた原材料も、『時間の経過』という熟成期間を経れば、人々に伝えられるだけの『物語』として生まれ変わるのです。

この『物語』即ち社長の持つ数々のストーリーやエピソードは、いつでも取り出し可能な「引き出し」にしまっておいて、必要とあらば披露できる状態にしておくことをお勧めします。

 

この「引き出し」の豊富さは、経営者にとって大いなる『武器』になります。

というのは、吟味され熟成されたストーリーを好まないという人は、そう多くはいないからです。社長独自の歴史の中で培われた『物語』というものは、当たり前の話ですが唯一のものであり、他では聞くことができないのです。この唯一の『物語』が真摯に語られるとき、人々は姿勢を正し、それを興味深く聞くのではないでしょうか。

 

ただ、少し気をつけなければならないのは、これは「自慢話」と紙一重であり、その区別がつけにくい、ということです。「自慢話」とは、言わば「まずい料理」のようなものであり、大抵の人は口に合わず聞いていてもあまり愉快な気持ちにはなりません。ただ、悲しいことに、世の中では結構このうまくもない「自慢話」の方が横行しており、質の高い『物語』が語られることの方が圧倒的に少ないのです。

 

何故ならば「自慢話」の方が『物語』に比べて料理としては簡便で、提供しやすいからにほかなりません。自分の体験を大した検証もせずに披露すれば、それはお手軽な「ご報告」であり、それが成功体験であれば「自慢話」になってしまうでしょう。この段階を超えて、人々が耳を傾けるレベルの『物語』を語れる社長は驚くほど少ないのです。

 

ということは、逆に『物語』をちゃんと語れる社長は貴重な存在、ということになります。

これは無理もない話で、自分の経験を『物語』のレベルまで昇華させるのは、かなりの「知的作業」になるからです。このことは、私にはそれほど難しい作業には思えなかったのですが、経験や体験を『物語』まで昇華させる人のあまりの少なさに、そう簡単ではないのだ、と気付かされました。

 

この取り組みには、先述のように一見知的水準の高さが求められそうですが、決してそんなことはありません。

それよりもむしろ「向き合う姿勢」の方が大事なのです。

自らの『体験』を『物語』に昇華させ、部下や若い世代、その他自分を取り巻く様々な人たちに是非伝えたい、という「気持ち」や「情熱」といった社長の「姿勢」そのものが問われるのです。

 

とはいえ、言葉を駆使して『物語』を作るのは確かに少し大変な「知的作業」になるかも知れません。

それでもこの作業には、必ず大きな「見返り」があります。

それは、そのプロセスにおいて自らの知性が磨かれるということと、その結果において間違いなく周りからのプラス評価につながるということです。

 

どうしても難しいようであれば、一つの方法として、それを経験し実践してきた先駆者に直接そのノウハウを聞いてみることです。数は少ないですが、自分のキャリアを上手に話される先輩経営者がいますので、そういう方たちとの直接のやり取り、或いはそういった方たちの講演やセミナーなどを通じて学ぶのです。もちろんそういった人たちの著書などからでも構いません。そこには多くの引き出しから溢れ出た『物語』が記されているはずです。

 

こういった人々のお話や言葉を他人事としてとらえてはいけません。

「自分には自分なりのレベルでできるんだ。」と、我がこととして『物語』が語れる経営者のなるべきです。

それは、先述したように事業を進める上でも大いなる『武器』となるからです。

 

私はこういったご指導を専門としていますが、これまで『物語』を引き出せなかった経営者は一人もいませんでした。

そして、その『物語』は、社長にとっての一つの販促ツールとして威力を発揮しています。

多くの「引き出し」を持っている経営者は、様々なシーンにおいて魅力的ですし、重宝されます。

 

ご自分の『物語』をできる限り沢山引き出して、まだまだ数の少ないそんな存在の一人になりませんか。

私はそれをお手伝いできる準備を整えて、皆さんとコラボできる日を心待ちにしております。