連載コラム MCコラム第79話 社長の捻り出すストーリーが未来を作る ―ストーリーが未来志向である理由―
会社がこれまで培ってきた有形無形の資産をストーリーという形で情報発信すれば、それだけで事業の発展に貢献しますよ、といったことをこれまで繰り返し述べてきました。もちろん必ずしもストーリー(物語)という形式にこだわる必要はないのですが、わかりやすい表現としてこの言葉を使っています。
要は情報発信することが大切なのであって、あまり形にこだわり過ぎては意味がありません。
そうすると、必ずこういったことを言う人が出てきます。
「それって所詮懐古趣味なんじゃないの。俺は過去を振り返っている暇はないよ。未来志向なんだ。」
といったご意見です。
なるほど、それはそれで結構なことです。未来志向を私も否定はしません。
ただ考えていただきたいのは、何を振り返り、どう活かすか、なのです。
うっとりと過去の思い出に浸りましょう、などと言っているのではありません。
「事業で積み上げてきた結果は今の仕事で日々伝えている。現在の商品やサービスの内容を見てもらえばそれで充分だ。」
という意見もあるでしょう。もちろんそれは分かりきったこととして申し上げているのです。
直接の仕事で世の中に貢献し訴えかけていくのは当然のことなのですが、それを違う表現でもっと訴求すれば、これまでとは異なる展開が待っていますよ、ということなのです。というのは事業で取り扱っている商材やサービスは、当たり前のことですが、その取引なり仕事に直接接点のある人しか知る由もありません。
しかしながら、その事業、その仕事を別の形で表現すれば直接は関係のない人達も広く知るところとなります。マス媒体の広告宣伝というのはまさにそこを狙って行なわれる訳です。ただ、広告宣伝というのは全く関係のない人達にまで届くような形、即ち印刷物や映像、音声などで配信されます。尚且つ相当な費用がかかるのが広告宣伝の特長ということになります。
それだけの費用を掛けたにもかかわらず、その露出の大半はスルーされます。その膨大なスルーの中から引っかかりを持つ相手が出てくればいいな、というのが広告宣伝の持つ宿命なのです。
しかし、社長の行なう情報発信というのはそれとは少し趣を異にしています。膨大なスルーというのは同じように行なわれるのかも知れませんが、これを継続していますと、そこにそれなりに興味を持つグループに収斂されてきます。ここで興味を持ってくれるグループは広告宣伝で心に引っかかりを持ってくれる人たちよりもかなりコアな人たちということになります。
しかも、これまで接点のなかった人たちですので、それは新しいマーケットの予備軍でもあります。情報発信というのはやがて双方向性を持つ可能性がありますので、新しいマーケットであると同時に、新しい情報提供者になる可能性も含んでいるのです。尚且つ、広告宣伝と違い、圧倒的に費用というものが掛かりません。
社長の行なう情報発信というのは、このように決して後ろ向きの作業ではありません。むしろ新しい未来と新しいマーケットを開拓していく強力なツールと言ってもいいくらいです。しかも、これを行なうのは全く少数派ですので、始めた時点で、かなりの差別化が同時進行することになります。
そしてそれを世の中に届けやすいのがストーリーという形なのです。この形を整えるのに少し手間がかかること間違いありませんので、そのお手伝いを是非させていただきたいのです。