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連載コラム MCコラム第184話 社長の専門性は既にインプット済みである―新たな知識を取り入れるよりアウトプットのスキルアップを図るべし―

 

普段私は「情報発信」という言葉を使っていますが、今回は「インプット」という言葉との対比を際立たせるために「アウトプット」という言葉を使います。「情報発信」と「アウトプット」は同義語と考えてください。

さて、以前私はこのコラムで「インプット一辺倒ではだめですよ。インプットは必ずアウトプットとペアにならなければ意味がありませんよ。」と、書いたことがあります。その意図は、社長さんたちの中には、熱心に勉強(インプット)をされる方が多い割には、それをアウトプットする人があまりに少ないので、インプットする努力の一部をアウトプットに振り向けた方がいいですよ、という気持ちを込めたものだったのです。

ところで、ここで誤解してほしくないのは、インプットしたらその内容について、必ず同じ分量だけアウトプットしてください、と言っているわけではない、ということです。そういう意図での「ペア」という意味ではありません。確かに新しい知識や経験をすぐさまアウトプットすれば、それを記憶に定着させインプットした知識を我がものにするという点では効果的ですが、そこに「必ず」という条件が付くわけではないのです。インプットされたものは、もっと時間をかけて熟成させ、しっかりと自分のものになってからアウトプットしても構わない、ということです。

インプットというのはどこまで行っても「受け身」の姿勢にほかなりません。アウトプットという能動的な試みと決定的に異なるのはその点なのです。

また、インプットの対象となるのは、そのほとんどが「知識」ということになりますので、現代においては「ググれば済む」というものも少なくありません。

単なる知識の習得であれば、何も自分の頭の中にすべてをストックする必要はないことになります。その努力の一端をアウトプットに向けるべきなのです。
アウトプットに必要な要素は、なにも新たな知識や珍しいテーマといったものではないということです。これはよく誤解される点でもあります。そういったものが身についていないからアウトプットができない、と考えるのは、間違いであり大いなる誤解なのです。

アウトプットすべきは、すでに社長の中にある専門性であり、その専門分野における体験エピソードなのです。

新しくインプットされた知識は必ずしも関係ありません。必要なのはインプットされた新しい知識ではなく、アウトプットする実践力なのです。

ただ、このアウトプットについては、書くことや話すという行為を通じて自分の考えを伝える必要があるので、その方法論としてのスキルアップが要求されるのです。

これに関しては、最低限のスキルを身につけておかなければ、せっかくの専門性や体験などが充分に伝わらないことになります。

また、このスキルについても、よく「俺は文才がないから・・・」と逃げを打つ人がいます。しかしながら、この時点では「文才」も関係ありません。私に言わせれば「文才」というのは、文章によってクリエイティブな世界まで表現できるほどの人のことであって、専門性など日常的なコンテンツを伝達するレベルの話であれば、そんなものは必要ないのです。物事を正確伝えるスキルがあれば済むことであり、最初はその際の表現力が多少稚拙であってもそれは仕方のないことなのです。

とはいえ、アウトプットに至るまでに何か必要な要素はないのか?と、問われれば、一つ考えられることがあります。

それは、身の回りに起こった物事を「編集」する能力です。

いくら「社長の専門性を世間にお伝えしなさい。」とお勧めしたところで、ご自分の専門的な知識を、そのまま書いたりしゃべったりしたのでは、まず素人には伝わりません。また、ストレートにそれだけ(専門性)を伝え続けたとしても、たちまちネタが尽きてしまうでしょう。
素人である読者や聴取者に、分かりやすく伝えるとすれば、日常の中で誰にしも起こっているようなことに、社長の専門性を絡めて書いたり話したりする必要があります。そうすれば、聞く方にとって専門性についてストレートに伝えられるよりも分かりやすいのです。

例えば、私のもう一つの専門分野である「税務会計」の世界でいえばこういうことになります。
― 先日、ある社長さんが「もっと内部留保を厚くしたいので、税金をできるだけ抑えたいのだが・・・」と言われました。「税金を払うからお金が残らないんだ。だから、税金を払わないようにすればお金がもっと残るはずだ。」という理屈です。これは一見、その通りと思う人もいるかも知れません。しかし、これでは、全く逆の理屈になります。節税というのは、様々な形でお金を社外に持ち出すことになるので、払う税金は確かに少なくなりますが、会社にお金も残りません。つまり、内部留保を厚くしたいという目標とは真逆の結果を招くことになるのです。それではいったいどうすればいいのか・・・・―

このあたりは、少し勉強をなさった社長さんたちであれば、とっくにご存知のことと思います。私の専門性を伝えるとすれば、上記ように実際にあったお問い合わせをネタにして伝えることで、より分かりやすくなるのです。もちろん、上記のお話は、ご相談とその回答の、ほんの一部を切り取ったところであり、これにはもっと詳しい解説がつくことになります。

このように実際にあったことと、ご自分の専門性について、どう絡めてお話しするかをうまく編集することで、それを読んだり聞いたりする素人の人たちには、より分かりやすい内容になるのです。

つまり、真ん中にご自分の専門性があって、それが現実の事象とどう絡むのか、という視点を常に持っていれば、長くアウトプットを続けていくことは不可能な話ではありません。

確かにそういう意味では、より多くインプットをしよう、という努力は無駄なものではないといえましょう。つまり、単に知識の習得ということではなく、アウトプットと関連づけるネタの収集としてのインプットであれば、それはあとで生きてくることになります。インプットしたのち、それをどうアウトプットとつなげるのかは、社長の編集能力にかかってくるのです。

ところで、私はまた別の意味でも、この「編集能力」には、できるだけ注力していただきたいと思っています。

というのは、ご自分の日々の業務や持っている専門性に対し、世の中のいろいろな事象を関連づけていくということは、ビジネスを広げていくためのインスピレーションを獲得する上で、極めて有効な訓練になるからです。

そもそも、アウトプット自体、それほど多くの経営者に実践されているわけではありません。ましてや自分のビジネスのさらなる可能性を追求するための手段として、アウトプットを位置付けている経営者など、本当に少ないといえるでしょう。

そういう意味では、世間ではまだそれほど認知されてはいませんが、アウトプットは社長の成長を加速させる意味で、極めて有効な手段の一つなのです。

インプットが大事、というところまでは、多くの経営者が意識しており、そのための努力も惜しまずに続けていることでしょう。しかし、その努力がアウトプットの領域まで及んでいる経営者は、まだほんの少数派です。

多くの勉強家の経営者たちから、頭一歩抜きんでるために、戦略的アウトプットに注力してみませんか。