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連載コラム MCコラム第173話 社長の「情報発信」は新しい時代の必須アイテム―「起業」はなくてはならない経済社会の細胞生成―

 

先日、出席したある金融機関のセミナーのテーマは、「後継者難」といわれる世の中の状況を反映して「事業承継支援」でした。

今、我々コンサルタントを含んで、企業を廃業に追い込まないための「事業承継支援」は、国を挙げての最も大きな課題といっても過言ではありません。何かしらの形で、経営コンサルタント、金融機関、会計事務所といった専門家たちが、急激にその数を減らしている中小企業を救うべく知恵を巡らせ、奔走しています。にもかかわらず、その減少のスピードは緩まる様子を見せません。何故でしょうか? それは、上記のセミナーで示された或るデータが如実に表しています。

そのデータというのは、

「現在自分が行なっている事業について、廃業を考えている人のその理由」

というアンケートに対する回答のことで、その中で、ダントツに多かったのは

「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた38,2%」

という理由だったのです。

これには、私もいささか驚かされたのですが、さらに2番目の理由は

「事業に将来性がない27,9%」

という回答でした。

この二つを合わせると、66,1%にもなります。つまり、「後継者難」による廃業予定が深刻というよりも、事業そのものに長期的な展望が持てない、という思いの方がはるかに多いことになるのです。

確かによく考えてみれば、なにかしら商売なり事業を始めるときに「よしっ、俺はこの会社を何十年も続く老舗にまで育て上げるぞ。」と決意して取り掛かる人などむしろ少なく「まずは何とか軌道に乗ればそれで御の字だ。」くらいに思って始める人がほとんどだと思います。
振り返ってみたとき、昭和の時代、まだ日本が高度経済成長期だった頃に設立した会社がそんなに残っているかといえば、それほど多くはないはずです。時代によって多少の差はあれ、企業の寿命など平均のデータを取ればそんなに長くはないと思います。

そもそも人が起業するとき、この事業を未来永劫続けたい、などと思う人は少なく、今回のデータにあったように「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」というのが妥当な線ではないのか、と思うのです。そう考えると、今我々が懸命に取り組もうとしている「事業承継支援」も「事業が代々続かないと困る」と考えているのはこちらの都合であって、当の事業を行なっている方は、それほど深刻に考えているわけではない、ということです。

このことは、アンケート結果の「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」という人が38%もいるという事実が示しています。これはつまり、何とか事業承継を行ない、自分の興した事業を続けていきたいと思うか否かは、その事業が、後々まで残したいほどうまくいった事業だったか、或いは魅力的な事業だったか、という後付けの問題なのです。

もちろん、せっかく始めた事業の寿命が長いに越したことはありません。しかし、これはイケる、と思って始めたもののそれほどでもなかったり、しばらくは当たったもののすぐにブームが去ってしまったり、と理由はそれぞれでしょうが、現実的には事業を長く続けるのは難しいのです。

そもそも、ビジネスというのはいつの時代もスクラップ&ビルドを繰り返しているわけで、世の中にとって常に新しいタイプの事業は必要になります。それは、中小企業だけの話ではなく、ソニーやホンダのような大企業も同じで、最初は小さな「商売」から始まっています。活発な「起業」が日本の経済成長の源泉だった、といっても過言ではないのです。

さて、こんな風に考えてくると、本質的な意味で経済を活性化させる策というのは、事業承継も大事ですが、もっと注力すべきなのは「新しいタイプの起業数を増やすこと」なのではないか、と私は思います。

本来、経済活性化の源泉はそこにあるのではないでしょうか。

これほど、技術の進歩や価値観の変化が激しい時代に、ビジネスチャンスがないはずがありません。それにしては、世界的に見ても、日本の起業件数は少ないといわれています。

人口減に転じた現在の日本では、かつてのように「量」の戦いでは、もはや立ちいかないことを示しています。そんな時こそ、極めて「質」の高い、新しい技術や切り口を持った企業の誕生が切望されているのです。

さて、そうやって出現した新規企業や第2創業といえるほど変貌を遂げた旧来の企業にとって、新しい世の中を生き抜く条件にはどのようなものがあるのでしょうか。それには次のような条件が考えられます。
・常に新しい市場ニーズに自社の商材やサービスをフォーカスできるマーケティング力
・待ちの姿勢ではなく、常にこちらから市場に仕掛けることができる営業力
・その営業を的確に援護射撃することができる販売促進企画力
・自社の存在や商材、サービスといったものを、常に市場に訴求することが可能な「情報発信力」
・上記のような諸条件を、常に社内に対して共有させることができるリーダーシップ
・上記のリーダーシップを受けてそれを実現させうる組織力
・その組織を自在に機能させることが可能な社内の仕組み作り
以上のような条件になるでしょうか。

ここでも「情報発信力」は、新しいタイプの企業にとってなくてはならない必須条件なのです。いずれも、これまで中小企業においては希薄と思われた諸条件といえます。新しいタイプの企業は、こういったそれまでとは異なるかなり難しい課題を克服する必要があるのです。

さて、こう考えてくると、親が「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」とか「事業に将来性がない」と思っているのであれば、子どもの方も自分の人生は自分の裁量で考えればいい、と私は思います。事業に対する「思い」や「情熱」といった、「無形の大事ななにか」が先代と後継者の間に共有できなければ、事業承継がうまくいくとは思えません。

このアンケート結果を見て私は、結局時代に合った新しい事業は新しいタイプの人からしか生まれないのだから、古いものを無理やり受け継いでいくよりは、全く新規でチャレンジした方が、話が早いのではないか、と思いました。

私の仕事としては、コンサルティングの専門性を通じて、そういったチャレンジを応援していくか、チャレンジしたものの壁にぶち当たって困っている若手経営者をサポートしていくというのが、今後の大きなテーマではないかと思っています。

経営環境的には厳しいものの、若い人のチャレンジ精神に期待するものです。