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連載コラム MCコラム第130話 社長の「情報発信」は世の中に「応える」こと―「答える」だけでは経営者として充分ではない―  

 

私たちのよく知っている言葉に「答える」という言葉と「応える」という言葉があります。微妙な意味の違いはありますが、普段私たちはそれほど意識して使い分けてはいないでしょう。

 

「答える」というのは、一つの疑問や課題に対して何かしらの解答を出すときに使っています。その「範囲」は比較的明確です。それに対して「応える」の方は、期待に応える、といった風に相手にある種の精神的な満足感を与えるようなときに使われています。

 

普段、私たちはこちらが持っている専門性や商材を通じて、お客様の要望を充足させています。特に、こちらにしかないであろう専門的な知識については、通常、顧客側では持ちあわせていません。先方に、何かしらの疑問がある場合、きちんとした「解答」を出すという形で、その都度私たち専門家は「答え」ているのです。普段の仕事では、このように単発的に「答え」を出していれば、それで十分顧客の満足は得られるでしょう。

 

しかしながら、このただ「答える」だけの仕事に終始していると、少し問題が出てきます。それは「答える」タイプの仕事は、今の時代ほぼ「検索」で解答を見つけることが可能となったからです。

そのために、かつてこちら側にしかなかった「専門性」という優位性が急速に薄れかかっているのです。

 

かつては、特定の分野の知識を頭脳に詰め込めるだけ詰め込んで、それを専門性として切り出すことで、一般人とは差別化された「専門家」として敬意が払われました。しかし、今では断片的な知識程度であれば、かなりの部分まで「検索」が可能なのです。

 

しばしば知識先行の人は、「答える」という行為が相手を満足させる、と考えがちです。しかし、おそらくこれからは、ただ「答える」だけでは評価されない時代になっていくでしょう。

 

それではこれからの時代、何が必要なのでしょうか。

それは、単に「答える」ではなく「応える」を通常業務に取り入れていくことだと考えられます。

もちろん、最低ラインとしての「答える」は必要ですが、常にそれは「応える」につながっているのか、「答える」だけで充分だろうか、と自問するべきです。

今ほど「知識=情報の汎用性」を手にすることが可能ではなかった時代は、頭脳に蓄えた専門性で勝負できたのでしょうが、現代は半端な知識では「検索」技術に長けた人に負けてしまいます。

 

「答える」に勝る「応える」を実践するためには、専門性の組み合わせ、コラボといったアイディアや発想が大事になります。

まさに、「専門性の応用編」なのです。

「応える」という字が「応用」という字と重なっていることは、このことを象徴しているといっていいでしょう。

 

例えば、私の会計人としての仕事でいえば、節税の提案として設備投資が有効だったとします。その場合、資金繰りをにらみながら、融資と組み合わせることを念頭にして金融機関と顧客を繋いでいく、といった2重3重の仕掛けを考える必要があります。このように、専門性を掛け合わせて、有効な手立てを提案していく訳です。こういった作業は、「節税」を「検索」しただけでは掴むことはできません。

 

他にも専門家ならではの発想やアイディアは、「応えよう」との気概を持ってその気になればいくらでも出てくると思います。ただこれは「その気」にならないと出てくるものではありません。それは、通常我々は「答える」だけの仕事の方が楽だからです。

 

これから世の中は、より複雑になっていきます。中でも経営の世界は、最も複雑怪奇です。自らの専門性に「応える」といったレベルを常に付加していくといった気概で臨まなければ、今後のビジネスは覚束ないものになるでしょう。

 

さて、ここまでは実務サイドの話です。専門性にさらに「応用編」が大事、と書きましたが、経営者にはもう一歩進んだ「応用編」が待っています。それは、私が常々提唱している「情報発信」においてです。実務として頼まれた訳でもない「情報発信」こそが、経営者が世の中に対して行なう「応える」の極致ではないでしょうか。

 

というのは、経営者がSNSやメディアを通じて行なう「情報発信」の中には、まさに「検索」では出てこないような、様々なエピソードを盛り込むことができるからです。専門世界を生きてきたからこそのエピソードが詰まっているのが、社長の「情報発信」なのです。ここに仕事を通して掴んできた社長の生き様を投影することができれば、それはまさに世間の好奇心に「応える」ことになるのです。これは、実務を通した「応える」よりも一段レベルの高い「応える」と言えるでしょう。

 

もちろん、実務を通した「応える」を実行するだけで、十分顧客の満足度は得られるでしょうが、この「情報発信」という応用編まで実践することができれば相当な差別化が図られることは間違いありません。つまり、「情報発信」は、顧客満足度のハードルが昔よりも格段に上がってきた現代において、それに応えるための極めて理にかなった方法論なのです。

 

とはいえ、頼まれた訳でもない「情報発信」です。やらなかったとしても誰に咎められることもありません。

決定的な差別化戦略として実践するか、しないかは社長の決断と行動力ひとつにかかっているのです。