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連載コラム MCコラム第185話 社長の「情報発信」はマーケティングである、という理由―プロダクトアウトをベースにマーケットインにお溺れない経営を―

独創的な授業?

 

近年よく使われるビジネス用語に「プロダクトアウト」「マーケットイン」という言葉があります。

よく言われるのは、現代は市場の声を聴いて企画や商品開発を進めるマーケットインの時代であり、作る側が勝手に商材の企画や開発を行ない供給するプロダクトアウトの時代ではない、ということです。

日本はかつて、現在の中国の富裕層がそうであるように、モノに異常にこだわって欲しがっていた時代がありました。モノそのものが不足していた時代から、モノの品質やブランドなどにこだわってそれを希求した時代まで、「売り手市場」が結構長く続いたのでした。この時代は、モノを提供する側が主導権を持つプロダクトアウトの時代だったのです。

この、国民の消費意欲が起爆剤となって、まさに日本の高度経済成長期を形成したのです。この時代は、日本の隅々まで消費活動は盛んで、地方においてもモノさえ提供すれば儲かる、商売する側に極めて有利な状況が長く続きました。この時代、消費者の要望や都合を優先しようという意識は薄く、モノを提供する側の意向でビジネスは成立していたのです。

そんな背景もあって、日本の場合、現在に至るも全般的にマーケティングが弱いといわれており、特に中小企業、中でも地方のそれにおいてはマーケティング不在が大きな課題になっているのです。

現在、マーケティングについては常に新しい手法が開発され、これらに関する書籍なども書店の一角に結構大きなスペースを占めています。マーケティングを勉強し、それを売上に繋げていくことは、企業の大小を問わず、大きなテーマの一つなのです。

そんな日本の状況ではあるのですが、近年少し異なる方向性も見え隠れし始めています。即ち「マーケティングはいらない」的な論調です。
マーケティングにとらわれずに自分の好きなものを作ろう。
自分のやりたいことをビジネスにしよう。
自分が欲しいと思うものを売ろう。
といったタイトルの書籍がちらほらと書店の書棚に並んでいます。

マーケティング、マーケティングとあまりに騒がれたために、ややうんざりしている状況を物語っているのでしょうか。この状況というのは、やがて、マーケットインの時代が終わって、昔のように売り手市場の世の中に戻るということを意味しているのでしょうか。

私は、全くそうは思いません。現代においても昔であっても、作り手や開発者が自分の作りたいものを作ったり開発したりするのは、当然の行為です。そういった革新的なエネルギーがなければ、そもそも産業革命的な事象は起こり得ません。マーケティングの手法というのは、そういった新しいものを生み出すためのコアになる行為とは別の次元の話と設定した方が妥当だと私は考えます。

その理由の第1は、作り手が作りたくて作りたくてたまらないから開発した、というものは、大抵の場合、よく考えてみればやはりその時代の要請やニーズ、雰囲気などを、何かしらの形で反映しているからです。

なにもかも超越して、自分が生きている世界とは全く無関係の摩訶不思議な発明、などというものは通常あり得ないのです。

したがって、マーケットインで言われているように、直接市場の声を聴く、という行為を経なくても、何かしら世の中に登場するものはその時代の要請を反映しているのです。

ただ、天才的な閃きによって、そのタイミングが早すぎた、しばらくしてから時代が追いついてきた、という現象は、しばしばみられますが・・・

さて、このプロダクトアウト的な発想で、自社の提供する商材やサービスを世の中に問う、というときどうするかです。社長が「俺はこの商品が絶対いいと思うんだよな。周りに聞いてもまだみんなキョトンとした顔をしているけど、俺はこれが絶対売れてくると思うんだよな。」と、ほれ込んだ商材があったとします。マーケットイン的なリサーチを軽く実施してみても、反応はそれほど芳しくありません。しかし、社長は「これがいける!」と確信している、という状況でビジネスとしてどう成立させるか、ということです。

私はこういうケースでの最大の有効な手法は「情報発信」と考えます。

そもそも、社長の発想に対して、まだ世間の反応はいまいちなのですから、より強く訴える必要があります。何故、マーケットイン的なアプローチではなくて、プロダクトアウト的な押し出しに見えたとしてもこの商材を世の中に進めたいのか。その思いは、広告宣伝的な手法では馴染みません。というより、空振りに終わり、コストを無駄にする恐れがあります。

こういった「訳(わけ)」や「背景」を伝えたいときには、「情報発信」といった手法が最もふさわしいのです。

この「伝える」「訴える」という行為が、私はマーケティング的、と考えます。社長の熱意や思いが世間に伝われば、それに共感した人々によって、新たなマーケットが形成される可能性が出てくるのです。

世の中の革新的な出来事はこうやって成立してきた、といっても過言ではありません。

昔は、人々にとって必要なもの、欲しいものというのが比較的はっきりしていました。そういう時代は、それほど細かい分析などしなくても、ひたすらプロダクトアウト的なアプローチでモノを提供していれば、ビジネスは成立していたのです。当時のプロダクトアウトと現在のプロダクトアウトとはやや意味合いが違います。大多数のみんなが欲しがる、というものは難しいとしても、コアなファンの共感を得るということは、現代においても成立可能なのです。

プロダクトアウトといいながら、何らかの形で「現代」という時代が要請しているであろうモノやことを提供している、と考えるのが妥当だとしたら、むしろ具体的なマーケティングはそのあとの課題になります。

即ち、そのモノやことをどうやって市場に知らしめ、届けるのか、認知から購入までどうやってアプローチしやすい道筋をつけるのか、といった課題がマーケティングの役割になるのです。

つまり、プロダクトアウト的発想の起点と、マーケットイン的な市場へのアプローチを絶妙に組み合わせることに成功した者が、現代的なビジネスを成立させることができるのです。

プロダクトアウトとマーケットインをつなぐ橋渡し役としての「情報発信」というポジションは、極めて重要といえましょう。

社長の発想は独創的、独自性に満ちたもので、プロダクトアウト的であるべきですが、それをビジネスとして成立させるにはマーケットイン的なアプローチを、というのが私の提案であり、社長にはそれを「情報発信」を通じてぜひ実践してもらいたいのです。