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連載コラム MCコラム第188話 社長、いつまで「いい子」でいるつもりですか?―「出る杭」にならなければ生き残れない―

 

先日、私が主催するいつものセミナーが終わって「質問」のコーナーに移ったときのことです。出席者の一人であった若い経営者に、セミナーのテーマである「情報発信(アウトプット)」について感想を求めました。
すると彼は、実に興味深いことを教えてくれました。

彼は私のセミナーの募集チラシを見たことで「情報発信(アウトプット)」についての重要性を考え出席したとのことでした。

「情報発信(アウトプット)」に関してどう思うか?という私の質問に対して彼は、

「自分は2代目だが、実は親からはいつも全く逆のことを言われてきた。」

というのです。

どういうことかというと、

「業界内ではできるだけ目立たないようにして、大人しくしておけ。自社の情報など一切出さないのが一番だ。目立つといろいろ言われてロクなことがない。」

と、先代である父親から言われ続けてきたというのです。

それに対して「あなたはどう思っているのですか?」という私の問いかけに、彼は

「自分は全く逆で、情報は出していった方がいいのではないか、と思うのですが、社長である父親には、いつもそういわれているので戸惑っています。」

という答えでした。

私は

「あなたの考えている通りです。お父さんの考えとは真逆かもしれませんが、これからは情報をどんどん出していく時代です。今後は、若いあなたの考えを押し通してください。」

と、申し上げました。

これはときどき聞く話です。

いわゆる

「業界内でどう思われるかが大事だ。下手に目立つことをすれば、よく思われなくなるのではないか。」

という、一種の強迫観念に近い考え方です。こんな思いに縛られてしまって動きがつかない、といった状態のことです。

私はこれについては「そんなことは全くの幻想である。」と、申し上げたいのです。

実際、人より目立つことをして、その業界とやらで、なにか不都合が起こったことがあるのでしょうか。そもそも大抵の人は、そんな目立つことなどやったこともないはずです。

したがって、起こりもしないことに対して「きっとそうなるに違いない。」と勝手に恐れているに過ぎないのです。

では、実際に多少目立つことをしたらどうなるでしょうか。私にはこういう経験があります。私が、地元の税理士会の支部長を引き受けた1年目のことです。支部長の任期は2年でした。
確定申告の忙しい時期も終わって少し経ったとき、その会議は開かれました。それは20年以上昔から、毎年定期的に行なわれている会議でした。私は初めて出席してみて、その会議内容のあまりのくだらなさに呆れてしまいました。どうしてこんなしょうもない会議を毎年開くのか不思議に思ったのです。

会議の後半、出席していた一人一人の支部長に意見を求められました。

みなさん、それなりに無難な感想や意見を述べられます。私の順番が巡ってきたとき、私は

「支部長の任期は2年です。来年もこの会議に出なければならないかと考えただけで、今から苦痛です。」

と言ってしまいました。会場が凍り付いたのはいうまでもありません。

静まり返った会場で、私は続けて

「せっかくこれだけの人数を集めてわざわざ会議を開かれるのであれば、もっと建設的な意見を交わす場にしてはどうですか。」

と、会議の中身への批判も含めて発言したのです。

当時私は、税理士の業界内では、若手とは言えないまでも、税理士全体の平均年齢よりはかなり下の方でした。その若造が、先述の「業界内での目立つ行為」という点では、これ以上目立ちようがないくらい目立つ発言をしてしまったわけです。

さて、そんなとんでもない行為をしてしまった私が、その後業界内でどうなったでしょうか。先輩税理士さんから、こっぴどく怒られたでしょうか。

結論からいうと、特に何も起こりませんでした

私は、税理士の持つ世界感が、あまりにも世間のビジネス感覚から遅れて遊離しているので、その後もしばしばその点を批判する発言をしましたが、業界から何らかの圧力なり、非難を受けたことは一度もありませんでした。

ただ、そういう発言を繰り返しても、業界が特に何も変わらなかったので、途中でその手の発言はやめることにしたのです。すると面白いことが起きました。

何人かの先輩税理士さんに

「海江田君、今日の会議では大人しかったね。いつものような発言が聞けるかと思っていたのに。」

と言われたのです。

彼らも業界の保守性については、課題に感じていたようで、私と同じようなことを考えていた人もいたのです。ただ、自分では発言しないで、私のような人間がもの申すのを傍から見ていただけでした。私はお腹の中で「だったら俺と一緒になって発言してくれればよかったのに・・・」と思ったものでした。しかし、冒頭のお父さん社長ではありませんが、業界内の軋轢を恐れて自分では発言しなかったのです。

私はここではっきり申し上げますが、自分が自分の事業において目立つことをしたからといって、業界内から具体的に何か不都合なことなど仕掛けられるということはない、と思っています。

ひがんだり恐れたりして、陰でごちゃごちゃ言う人はいるかも知れませんが、そんな人は放っておけばいいのです。おそらく私にも批判的な人はいたと思います。(今もいるかも知れません。)しかし、だからといって私の事業の進行を邪魔するという人はいませんでしたし、またできるはずもありません。

何か目立つことをすると、自分に対して業界内で不都合なことが起きる、というのは幻想です。ススキの穂を幽霊と見間違えるようなもので、そんなことは存在しないのです。何故そんなことを考えてしまうのでしょう。それは日本人の意識の中に「村社会」のDNAが強く残っているからではないでしょうか。周りと同じようにしていなければよくないことが起こるかも知れない、という、起こりもしない事態を恐れて、自分の行動を制限してしまうのです。そんな考えや思い込みで行動を起こさないのはもったいない話です。

中でも「情報発信(アウトプット)」は、業界に向けて発するものではありません。

顧客あるいは顧客候補に向けて発するのです。

顧客になる可能性のない業界内の人間がどう思うかなどというのは、本当にどうでもいいことなのです。

ただ、ひとつだけ「業界」というものを意識せざるを得ないとすれば、次のケースでしょう。それは業界内の役職を狙っているときです。業界団体の会長とか副会長とか、専務理事とか何とか部長とかいうポジションを狙っているのであれば、私のような発言は控えるべきでしょう。私の場合、そんなことは考えたこともなかったので、平気であんな発言をしたのですが、人事のポジションに希望や興味のある方はやめておいた方がいいと思います。

しかし、そんなこと(役職など)に関心のない人は、ご自分の事業の発展のみに邁進すればいいのです。業界内の評価など全く関係ありません。

私がお勧めする「情報発信(アウトプット)戦略」でいえば、先述のように業界内でどう評価されるかなどどうでもいいことです。

必要な情報が顧客あるいは顧客候補に届けばいいのです。

その情報をもとに顧客あるいは顧客候補がこちらを選ぶかどうかは、彼らの自由です。

ここにおいて、こちら側の業界内の意識や動向がどうであるか、などどうでもいいことなのです。

今回は、出る杭は打たれるんじゃないか、目立つとロクなことはないんじゃないかという、いわば「杞憂」もっと言えば「幻想」に対して、私の思うところを述べてみました。

「情報発信(アウトプット)」の重要性がこれまでになく高まってきているにもかかわらず、それに着手する経営者がこれほど少ないのは、自分のスキルややる気の問題だけでなく、こういった「いらない配慮」もあるのではないかと思い、書いてみたのです。

「業界」とは何も喧嘩する必要はありませんが、適切かつ適当な距離を持ってつき合っていけばいいと思います。

これはいつも言うことですが、業界内の仲間がお金をくれるわけではありません。

自社にお金(売上)を払ってくれるのは顧客だけです。

顧客あるいは顧客候補にこちらの情報が届かなければ、永遠に取引関係など発生しないのです。

そのことを肝に銘じて、業界内の評価など全く気にせず、適切で有効な「情報発信(アウトプット)」に取り組んでみてください。

いい結果は必ず顧客が出してくれるはずです。