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連載コラム MCコラム第263話 現代経営に必要な「7つの条件」―「情報発信戦略」のポジションについて考える―

 

私は自分のコンサルティングについて、セミナーを行なう際に、現代経営に必要な条件として次の7つの項目を挙げています。

 

1.常に新しい市場ニーズに自社の商材やサービスをフォーカスできるマーケティング力

2.待ちの姿勢ではなく、いつでもこちらから市場に仕掛けられる営業力

3.その営業を的確に援護射撃することができる販売促進企画力

4.自社の存在や商材、サービスといったものを、常時市場に訴求することが可能な「情報発信力」

5.上記のような諸条件を、社内に対して共有させるためのリーダーシップ

6.上記のリーダーシップを受けてそれを実現させうる組織力

7.その組織を自在に機能させることが可能な社内の仕組み作り

 

これだけの条件をちゃんと全うすれば、現代的な経営に関して、ほぼ隙のない形で取り組むことができるのではないでしょうか。

 

さて、上記7項目の中で、やはり際立って「現代的」と言えるのは、4の

自社の存在や商材、サービスといったものを、常時市場に訴求することが可能な「情報発信力」

ではないか、と思います。

 

その上の3番「販売促進企画力」において、広告宣伝をはじめとする販売促進活動は以前から企業の中で当たり前に存在していたものです。これらは、大企業であれば大手広告代理店、中小企業であれば中小の広告代理店或いは印刷会社などの専門職に依頼していると思います。また媒体としては、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどの各種メディアが存在しています。

 

企業が、広告宣伝活動をそれなりに全うするとすれば、その企画制作において広告代理店、媒体使用においてはマスメディアと、少なくともこの2つのタイプの専門企業に依頼することになります。

つまり、広告宣伝という事業活動は、その制作と媒体使用において、他者依存にならざるを得ないし、そこに対してある程度のコストを見込まざるを得ない構造にある、といえるのです。

 

それが、現在では自ら発信する情報において、そのコンテンツもインターネットを利用する様々な媒体についても、自ら考え選択できるようになりました。

これは、かつては考えられなかった革命的な出来事です。しかし、この自らハンドリング可能な貴重な媒体を、まだ戦略的に使いこなしている経営者は少数派といえます。

そういう意味では、4番の情報発信戦略は、現代の企業活動に必要な条件としては新しいアイテムといえましょう。

 

さて、改めて冒頭の7つの項目を振り返ったとき、あることに気がつきます。

それは、始めの3項目は「マーケティング」「営業力」「販売促進企画力」という、企業活動の中で「外」に向かったものである、ということです。

いずれも、企業の「外」に存在する「市場(マーケット)」或いは「顧客」といった対象を意識した企業活動項目です。

 

これに対して、後ろの5,6,7番の3項目は「リーダーシップ」「組織力」「仕組み作り」という、企業の「内」に向かった重要項目といえます。

前半の1,2,3で意識したのは、マーケットという「外」に向かうための戦略的重要課題でした。

企業経営においては、これらの「外」に向かう戦略課題と、「内」に向かう努力目標が存在するのです。

これらの各項目は、企業が取り組むべき条件として昔から存在していたものです。マーケティングやリーダーシップといった現代的な表現が登場しているだけで、考え方としては普遍的なものといえましょう。

 

ところで、ここで一つ気がつくことがあります。

それは、4番の「情報発信力」だけが以前にはなかったもの、ということです。

それは前述のように、インターネットという媒体が世の中に存在しなかったからにほかなりません。個々の企業が、自らをメディア化して、情報を発信していくなどということは、考えられなかったことでした。それが、テクノロジーの発達によって可能になったのですから、4番の「情報発信力」の項目だけが新しいのです。

 

さらに、この4番の「情報発信力」という項目には際立った特徴があります。

それは、前述のように1,2,3が「外」に向かうものであり、5.6.7が「内」に向かうものであるとすれば、4番の「情報発信力」だけはその両方の要素を備えているということです。

 

「情報発信(アウトプット)」そのものは、「外」に向かったものですが、それを考え発信するアクション自体は企業の「内」で行なうものだからです。

特に、経営者自らが行なう「情報発信(アウトプット)」は、それを考え組み立てる段階で、リーダーシップ、組織編成、仕組み作りなどにも、必ず思いが至ることになります。

 

つまり、現代企業経営に必要な条件としての7つの項目の中で、4番だけが企業の「外」に向かう活動と「内」に向かう活動の両方を兼ね備えている極めて重要なポジションにある、ということになります。

おそらく、自社企業がメディア化していくことの重要性に気がついている経営者は、まだかなり少数派といえましょう。

 

しかしこのことは、今後の企業活動において極めて重要なファクターとなっていくはずです。

以前に比べて、広告宣伝というものの力が、相当落ちてきている現在、有効な「情報発信戦略」を自社内に打ち立てるということは、他社との差別化を図る上でも、欠くことのできない大きな課題と言えるでしょう。