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連載コラム MCコラム第273話 本来、頭がいいというのは・・・―脳の活性化のためにもインプット型からアウトプット型へ―Ⅱ    

 

前回のこのコラムで、精神科医である和田秀樹医師の「脳」に関するお話を取り上げました。和田医師は、その著書の中で、「脳」の中の「前頭葉」について触れておられます。「前頭葉」とは、大脳の前方部分のことで、思考や創造、意欲、理性などに関わっており、ここが衰えてくると、意欲ややる気が低下し、感情のコントロールが効かなくなるなどの兆候が表れてくると書かれています。

 

ところが、その前頭葉の委縮は40代、50代から始まるらしく、何もしなければただ衰えるばかりになるそうです。「前頭葉」を活性化し、脳が老化しないようにするにはどうしたらいいのか、という解決策として和田医師は、生活が単調にならないように心掛けることをお勧めしておられました。

 

そして、さらに踏み込んだ解決策として

―前頭葉の老化を防ぐためには、「アウトプット型」の勉強スタイルに意識して変えていくということも効果的です。―

とおっしゃっていたのです。

 

このアウトプットの具体的な行為として和田医師は「会話」の重要性について解説しておられました。さらにこの「会話」において注意すべき点は

― 得た知識を、これまでの経験や他の知識を使って加工し、「自分の考え」として述べるときに前頭葉は活性化されるのです。―

と、言っておられます。

 

今回は、この「知識を自らの経験をもって加工し、「自分の考え」としてアウトプットする」ということの重要性について述べてみたいと思います。

というのは、私のお勧めする「情報発信(アウトプット)」の最も重要な基盤となるのは、この「自分で考える」という点にあるからです。

つまり、「受け売り」の「情報発信(アウトプット)」ではほとんど意味がない、ということを申し上げたいのです。

この考え方については、和田医師の「脳の活性化」の理論とかなりシンクロする部分が多いので、その点を、和田医師の医学的見解と絡ませながら解説したいと思います。

 

和田医師は、「会話」という形で「自分の考え」を述べることの重要性を次のように解説されています。

― どこかで得た知識や情報だけを話すのではなく、常に、自分の考えに加工して述べるということを、心のどこかに留めておくと、会話の際に前頭葉はフル稼働します。―

 

この「どこかで得た知識や情報だけを話す」というのはよくあることで、経営者の場合、いろいろな会合の挨拶などでたびたび見られる傾向です。即ち

「世界経済はまことに逼迫した状況にあり、先の国連における総会においても○○といった決議がなされ、日本経済に対する影響に関して、新聞各紙においても、大きな懸念事項として云々・・・」といった、現在手掛けている事業とは何の接点もない全くピント外れの、大仰な情報の羅列から始まる挨拶などは、まさにその典型といっていいでしょう。まあ、こういった挨拶などには一つの「型」のようなものがあるわけで、それはある程度仕方がないとしても、通常の「情報発信(アウトプット)」において、知識や情報をそのまま「受け売り」したのでは、相手に対して全く響きません。

 

この点を、和田医師は、「頭がいいとは?」の答えとして、次のように述べておられます。

― 本来、頭がいいというのは、得た知識を自分なりに加工してひとつの考えを提示し、その意見や考え方がすばらしいというときに、その人へ与える評価だと私は考えています。―

 

これはまさにその通りで、オリジナリティに欠ける話というのは、結果的に面白みもなければ深みもないものです。経営者の「情報発信(アウトプット)」が興味深く面白いのは、その経験に裏打ちされたオリジナリティ(独自性)があるからにほかなりません。

 

和田医師の著書には、年齢と脳の関係について書かれており、特に高齢になってからの脳の働きについて、踏み込んだ見解を述べられています。

― 高齢になったら、一生懸命、勉強するよりも、これまでの知識や経験を自分なりの意見に加工してアウトプットすることを意識的に行なってください。

実際、70代の人たちには、これまでの人生で得たそれだけの知識と経験があります。必ず、その人なりのユニークな発信が何かできるはずです。―

これはまさに、私がキャリアを積んだ経営者に言いたいことです。

 

経営者の場合、年齢に関係なく、比較的短い間に多くの経験を積むはずです。しかも、それが自分の専門分野においては、他人よりも濃い経験を積むことになるのではないでしょうか。

したがって、経営者の場合、上記のように高齢になるのを待つ必要はなく、それまで積んだ経験をどんどん発信していけばいいと思います。

 

上記のような「ユニークな発信」が、ただの「受け売り」よりも他者の評価が高く、かつ、自分の脳(特に前頭葉)の活性化にも役に立つとすれば、これは一石二鳥ということになります。

経営者は常に脳を活性化させておかねばならないポジションだと思いますので、和田医師の上記の提言は、そのまま経営者にとって有意な行為となるはずです。

 

最後に「情報発信(アウトプット)」に関する和田医師の具体的な提言を紹介したいと思います。

― いまではブログやフェイスブックなどのSNSがありますから、そこに自分の意見を書き込むようにすれば、直接の会話ができなくても前頭葉は活性化します。(中略)

70代になったら、どのような形であれアウトプット型の行動スタイルを心がけましょう。そして、何かを発信する機会には、「物知りな人」より、「話の面白い人」を目指すことが前頭葉の老化防止には効果的です。―

 

上記のように、和田医師もSNSなどの活用を勧めておられます。この場合の高齢者というのはあくまでも個人レベルの話でしょうが、これを、経営者におけるビジネスレベルの話に置き換えてもいいわけです。

 

ただの情報の「受け売り」ではなく、自分の頭の中で組み立てた意見や見解といったものをアウトプットすることが、脳(特に前頭葉)の活性化につながるとすれば、これは高齢者の老化防止に限ることなく、大いに活用すればいいと思います。これからの時代、経営者にとって、思考や創造、意欲、理性などに深く関わる前頭葉の役割はますます高まってきます。

ある意味、アウトプットは最も効率の良いキャリアの蓄積方法かもしれません。

経営者は、この高効率の手法に是非前向きに取り組んでみてください。