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連載コラム MCコラム第239話 本当は相性がいい農業経営と「情報発信(アウトプット)」―「連帯感」が情報の共有を生む―  

 

私がコンサルティングビジネスの一方で営んでいる会計事務所は、鹿児島県の大隅半島を拠点にしています。

この地域の基幹産業は農業及び畜産業ということになります。

また、養殖による漁業も盛んなため、「食」にまつわる諸産業が地域を支えているといっても過言ではありません。

そのため、私の会計事務所では、これらの産業に従事する事業者の多くがクライアント全体の高い割合を占めています。

 

とはいえ、これらの産業の従事者がきちんと帳簿をつけて、決算を組み適正な税務申告を行なうようになったのは、商工業者よりはかなり後になってからのことでした。特に農業の場合は零細な規模のものが多かったので、記帳や申告に対する意識は低かったといえるでしょう。しかし、そういった事情も近年変化してきており、法人化による大規模化や近代的な経営形態にチャレンジする農業経営者も増えてきています。

 

そんな中で、最近興味深かったのは、果樹栽培で大規模化を狙っているというお話でした。相談に来られたのは、複数の会社を経営しておられる年配の社長さんでした。実験的に果樹の栽培を行なったところ、大隅半島がその果樹の生育に向いていることがわかったので、農業法人を設立して本格的に取り組みたい、とのご希望だったのです。私もまだ関与の途中なので詳しいことは述べられませんが、試みとしては大変面白そうな案件でした。

 

その社長さんの構想は、果物の直接出荷販売、1次加工して食品業者への販売、2次加工まで行なって商品化し消費者への直接販売を行なう、といったものでした。

つまりBtoB、BtoCを組み合わせて、一つの大きな事業にまで仕立てていくといったお考えだったのです。

前述のように、地元では農業が基幹産業になってはいましたが、果樹栽培でその規模までの試みというのは聞いたことがなく、おそらく初めてのチャレンジではないかと思います。これを実現させるためには、安定した収穫、人員の手配、流通へのアプローチ、自治体の支援、資金繰り等金融支援など、高いハードルがまだまだ考えられますが、挑戦のやり甲斐はありそうです。

 

私はこのお話を聞いたとき、

「軌道に乗せるまでは、まだいろいろと紆余曲折はありそうだが、軌道に乗ったならば間違いなく「情報発信(アウトプット)戦略」が必要になるな。」

と直観しました。

これまで農業経営と会計税務という分野が、今一つ関係性が薄かったように、「情報発信(アウトプット)」ともそれほど深く関連するものではないだろう、と思われていたのではないかと思います。

しかし、おそらくこれからは農業経営と「情報発信(アウトプット)」というのは密接な関係性をもっていくのではないでしょうか。

 

その理由としては、農業という分野がビジュアルで見せられる部分が非常に多いということです。

種まきから芽吹いて成長していく過程、適時的確な肥料の投入、開花から結実へのプロセス等々「画(え)」にしてアピールできる部分が多種多様に存在するからです。そういう意味では果樹の成長過程と、果実が実り収穫を迎える時期などは、どこをとっても「情報発信(アウトプット)」にとっておいしい材料には事欠きません。

 

そんなことを考えていたら、実際そういった「情報発信(アウトプット)」を実践している人が身近にいたのです。それは、事務所と顧問契約を結んでいる若手の農業経営者で、ネギを主として栽培している方です。彼は、自分の作るネギに関してはかなりこだわりがあるようで、その栽培方法等についても日夜研究を怠りなく努力を重ねています。

 

また以前、私の「情報発信戦略セミナー」にも参加しており、「情報発信(アウトプット)」の重要性を自覚したようでした。そこで、ほぼ毎日ネギに関する情報を、主にスマホで撮った画像を材料にして「情報発信(アウトプット)」を続けていたのです。私も見せてもらいましたが、その生育過程の畑の様子、収穫後流通に乗せるまでのパッケージのやり方など興味深い内容でした。

 

彼はこういった努力をすることで、生育に関する同業者とのノウハウのやりとり、関心を持ってくれた消費者からの受注など、面白い情報交換や直接ビジネスに結びつけているようでした。

これを見て私は

「なるほど。農業というのは「情報発信(アウトプット)」との相性が極めて良い産業だな。」

と、思ったのです。

 

現場の様々な状況というのは、言葉で四の五の説明するよりはビジュアル一発「画」で見せた方がはるかに速いし、説得力もあります。そういう意味では「情報発信(アウトプット)」が大いに効き目を発揮する産業の一つといえるのです。

 

とはいえ、おそらく農業と「情報発信(アウトプット)」を、ビジネス上の有効なコラボ関係として結び付けている人は少なく、ましてや戦略的に位置付けている人は極めて少数派でしょう。しかしながら、これからの農業の可能性や事業としての拡張性を考えますと、日常的な仕事の中身を「情報発信(アウトプット)」という手段で外に向かって伝えていくことは、かなり意義深い話になるのではないでしょうか。

 

今回のテーマを整理しますと次のようになります。

・農業は「情報発信(アウトプット)」と相性がいい

・生育のプロセスが重要な産業だけに、「画」で見るとよくわかる

・生育プのロセスのこだわりや努力を「画」でアピールしやすい

・その「画」が、育成ノウハウなどを共有するためのデータとなる

・努力の成果を「画」で伝えることによって、ファン作りに役立てられる

・そのファンに購入を促すことで流通にまでつなげられる

 

ざっとこういったメリットが農業と「情報発信(アウトプット)」の間には存在します。こういう視点で改めてみてみると、これまで考えもしなった農業と「情報発信(アウトプット)」の関係というものが、いかに重要かということがご理解されると思います。

 

ただ、こういう切り口は農業に限るとは限りません。

自分が所属している産業或いは事業というものをもう一度よく考えてみれば、どこかに「情報発信(アウトプット)」との重要な接点はあるはずです。

今回は、今まであまり考えもしなかったであろう農業と「情報発信(アウトプット)」との関係で説明しましたが、これを自分の事業に置き換えて考えることは、大いに意味のあることと私は思っています。