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連載コラム MCコラム第198話 地縁血縁義理人情ビジネスモデルの終焉―地方は新たな価値基準の創造を模索する時代に―

 

私はコンサルタントとして中小企業の、中でも地方の中小企業における「情報発信(アウトプット)戦略」についてコンサルティングを行なう一方で、税理士という地元経済に深くかかわる仕事にも携わっています。

そこで、いつもつくづく感じるのは、「日本の経済は、これまで強固な地縁血縁ビジネスモデルに支えられていたのだなあ。」ということです。

時代がかなり移り変わったにもかかわらず、日本人のこのモデルに対する執着心にはまだまだ根強いものがあるようです。

地方に行くほど、特にその傾向が強く、それはもっと具体的に「地縁血縁義理人情顔パスビジネスモデル」と呼んでもいいくらいの状況だと感じます。

ただこれは、ある意味最強のビジネスモデルでした。

何故ならば、このモデルのもとでは、営業活動や販売促進活動というものがほとんど必要ないために、それらに要したであろう莫大な経費が節約できたからです。

営業や販売促進にかかる経費は、企業活動の中でも最も大きな支出になりますので、ここをカットできる、というメリットには計り知れないものがありました。

しかしながら、このモデルが最強であるためには一定の条件が必要になります。

その条件というのは、地縁血縁関係を構成する人口が多いということと、そこに暮らす人々の消費マインドが旺盛であるということです。

過疎化高齢化が進んでしまった地方においても、昔はその条件を2つとも備えていたのです。

しかしながら、地方の人口が極端に減少し、高齢化が進んだために購買意欲も縮小してしまった現代において、もはや「地縁血縁義理人情顔パスビジネスモデル」はその存在基盤を失ってしまいました。

上記の条件を満たせなくなった今の世の中で、このモデルは終焉を迎えざるを得なかったのです。

ところが残念なことに、地方のビジネスマインドは、まだこの価値基準を基盤として、自らの商売を成り立たせようとしています。

「狭いムラ社会の中で、これまで通りなんとか俺の商売は成り立たないものだろうか?」というのが、いまだに地方で事業を展開している人々の基本的なビジネスマインドなのです。

世界的に見ても歴史的に見ても「地縁血縁義理人情顔パスモデル」というかなり特殊なモデルで成り立ってきたのが、日本の地方における商売でした。このモデルが極めてレアケースであることはいうまでもありません。私たちを取り巻く経済環境が劇的に変化した現在、今後はこんなモデルでは立ち行かないのだ、という事実をもっとシビアに認識する必要があります。

しかし、不思議なことにというか、ある意味滑稽なというか、地方において「地縁血縁義理人情顔パスモデル」からの脱皮を提言すると、必ず起こる一つの現象があります。それはどういうことかというと、「お前は「地縁血縁義理人情」を否定するのか?!?」と非難されるのです。その結果「それは都会のやり方で、東京主義だ!」とか「そんなドライな考えでは田舎ではやっていけない。」などと言われることもあります。地方の人々の「地縁血縁義理人情顔パスモデル」に対する依存症は、そうでない人たちが想像する以上に強固なものがあるのです。

とはいえ、これでは今後やっていけないという点に関しては、さすがに自覚されつつあるようです。

ただ、これに代わる次のモデルを自分のものにする、というレベルにまでは至っていません。

それには相当の発想の転換が必要なのですが、それができずに延々と足踏みを続けている状況なのです。

また、「地縁血縁義理人情顔パスモデル」には、このモデルが長年抱えてきた大きな問題点があります。

この問題点ゆえに地方のビジネスは発展の可能性を削がれてきた、といっても過言ではありません。

その問題点というのは「甘えの構造」ということになります。

それは、商取引が「あの人とは地縁血縁関係にあるのだから、うちから買って当然なのだ。」という前提のもとに行なわれるため、その商材が相手(購入する側)にとって、本当に必要なものだったか、欲していたものだったかというよりは、義理にかなっていたか、付き合いを損なうものではなかったかという本筋とは離れたところが重要視されるところにあります。

そのために、常に提供する側の都合が優先され、マーケティング的感覚など全く養われないことになるのです。

このように「地縁血縁義理人情顔パスモデル」は、一見、相手のことを思いやっているように見えて、実はビジネスレベルとしてはそれほど高いものにはなり得ません。「知らない仲じゃないんだから、(提供する商品のクオリティも)これくらいでいいじゃないか。」といった「甘えの構造」が生まれやすいモデルなのです。徹底的に自分の提供する商材やサービスのクオリティを上げていこうという精神よりも、普段どれだけ親しく付き合っているか、が、ビジネスを遂行する際のバロメーターになるために、逆にそこが手薄になると、「あいつは義理に欠ける」といった、本来の商取引とは異なる筋の非難を浴びることになるのです。

このように、これまで「販売力」がなくてもなんとかやってこられたのが、地方における商売の世界でした。

しかしそれは、結果として「商品力」に磨きをかけることも疎かにしてしまったのです。

「商品力」と「販売力」、ビジネスに必要とされるこの2つの要素のどちらも欠けるとしたら、地方における商売は衰退するしかなかったのです。

この状況に歯止めをかけるべく、なにかこれといった効き目のある打ち手はないものか、というのが私の長年のテーマでした。そこで考えたのが、事業をやっていれば、当然行なわれていなければならないはずの様々な基本的な打ち手を実施することでした。

その一つが「販売促進力」をつける、ということになります。

「販売促進」は、「販売」をスムーズに推進するために、後ろから押したり横から援護射撃したりするもので、広報とか広告宣伝とかが、この範疇に入ります。もともと、「商品力」や「販売力」が脆弱だった地方の商売において、この「販売促進力」というものは、ほとんど存在しないに等しい状況でした。「商品力」や「販売力」「販売促進力」といったビジネス遂行上、必要な要素を磨くことなく、地縁血縁という特殊な世界に依拠してここまで来たのですから、まずそれを変える必要があったのです。

その際最も障害となったのは、「(資金がないので)予算が取れない」ということと「(考えたこともやったこともないので)ノウハウがない」ということでした。

金がない、ノウハウがない、という制約の中で、何ができるのだろうか?」

というのは、かなり難しい課題になります。

そんな制約の中で、私が思いついたのが「情報発信(アウトプット)」という方法論でした。

予算がない中で、取ることのできる唯一の販売促進手法が「情報発信(アウトプット)」ということになります。

ここに行き着いた背景には、なんといってもインターネットの発達ということがあります。

この媒体なくしては、「情報発信戦略」というビジネス戦略は成り立ちません。

個人レベルでも手軽にコストをかけることなく、自らの情報をマス市場に向かって発信できる、という人類史上初めてのテクノロジーを手に入れたのですから、ビジネスのスタイルが変わるのは当然といえば当然のことなのです。

このインターネットを利用するという点において、都会と田舎、大企業と中小企業といった立場の違いで差がつくことはありません。全くフラットな条件のもとで「情報発信(アウトプット)」という方法論は取り組むことができるのです。ただ、それによって得られる効果には、大きな差が表れます。

地方ほど「情報発信(アウトプット)」を行なえば、目立つ存在として浮上しますし、中小企業の場合、大企業よりもその効果はダイレクトに業績に跳ね返ってきます。

つまり、業績低迷を打破するための突破口が見つからず、苦戦する地方の中小企業において「情報発信(アウトプット)」という方法論は、やらない理由が見つからないくらい有効な販売促進手段なのです。

にもかかわらず、実施する企業は少なく、ほとんどこの恩恵にあずかっていません。発信すべきコンテンツの作り方、発信のコツと注意点など細かいことはいろいろありますが、とにかく「情報発信(アウトプット)」を戦略的に企業活動に取り入れるべき時代に来ていることは間違いないのです。

私は様々な手段を使って、顧客である中小企業にこの手法を伝えようとしていますが、できれば自らこの大きなメリットに気がついて、多くの企業が「情報発信(アウトプット)」に取り組んでいかれることを願っています。