連載コラム MCコラム第31話 伝えなければ伝わらないこちらの世界―「当たり前」の盲点をあえて切り拓く― Ⅱ
一般の人たちは、こちら側のことを「何故そんなに知らない」のか、また、こちら側の「何を知らない」のか・・・・
例えば、このコラムは経営者向けに書いています。
つまり、このコラムは、その読者である経営者が「経営」というものに関して、筆者と共通の了解事項や知識レベルがある、ということを前提に書いているのです。
しかしながら、ラジオや一般紙のコラムなどは、ほとんど普通の民間人がその聴取者や購読者です。この人たちは、こちら側の「専門性」とともに「経営」についても素人だと思った方がいいでしょう。
世間の人は経営者に比べて、その経営者が持つ「専門性」についてはほとんど素人であり、また「経営」についてはそれを考えたり悩んだりする立場にありません。
そのために、この二つについては「知らない」ということになるのです。
一方、経営者側にとって「専門性」と「経営」は、きっちり分けて捉えられるものではありません。日常、事業を行なっている中で不可分に両方に向き合っています。
ですから、なにかと苦労している自分の事業について話す機会があれば、その両方を伝えようとします。ところが先述のように、素人である一般人にとってはそのどちらも縁のない(知らない)世界なので、余計わかりにくくなるのです。
私のケースでも、女性パーソナリティーが「は?」という顔をしたり、あまりよくわかっていないな、と感じたりしたのは、その「専門性」がわかりにくかったり「経営者の立場」がよくわからなかったりしたときだったんだな、と思い当たります。
ですから、こちらが情報発信するとき分かり易さのバロメーターとして、例えばラジオの場合、頭はいいけれどもこちらの専門性と経営については全く素人である女性パーソナリティーにもわかるレベルで話をする、ということが言えると思います。
これは、私が日常的にも気をつけているところです。
ただ、ここで大切なのは、先述した「知らない」ということと、「興味がない」ということとは同じではない、という事実です。
一般人である聴取者や読者は、「専門性」については素人なのですから、最初からその専門性についてわからないのは当たり前です。しかし、その入口のところを分かり易く説明してあげる、或いは丁寧に解説してあげれば、まず興味を持ち始めます。更に、意外な一面、珍しい切り口などのエピソードが加われば、より深く知ろうとしてくれるはずです。
私は多くの経営者に、そういった情報発信をしていただきたいのです。
「あなたのその専門性に、あなたが思っているより多くの人たちが興味を持っているのですよ。」
と、伝えたいのです。
人は基本的に、好奇心溢れる動物です。自分のそれまで知らなかった新しいことを知りたいのです。専門性に深く切り込んだお話は、意外性に富んでいて、興味深いことだらけでしょう。
私は、それを伝えることができるのが経営者だと思っています。
とはいえ、こちらは専門家ですので、これまでも申し上げてきましたように、それなりに「当たり前」と思っている世界を持っています。しかし、それが当たり前になり過ぎて、分かり易く伝える努力を怠ったならば、伝わるものも伝わらないことを忘れないでいただきたい、と思うのです。
つまり、情報発信は大事だけれど、相手に伝わらなかったらなんにもならないということです。情報発信の大切さはこれまで、いろいろと述べてきましたが、せっかく発信した情報がわかりにくいものだったらもったいない話です。
自社の持つ専門性を分かり易く伝えることで、多くの人の興味を引き、その好奇心を満足させるという行為は、そのものが質の高い販売促進に繋がります。
経営者は、自らが率先してメディアを上手に使い自社の発展に貢献して下さい。
私は自身の経験を通じて、そのお手伝いをさせていただくのが私の役割だと思っています。