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連載コラム MCコラム第167話 企業発展力は「企業価値」×「情報発信力」の時代―「足し算」ではなく「掛け算」であることに留意する―

 

企業にはそれぞれ力量というものがあります。

それは信用力とかネームバリューに始まり、規模であったり、売上高であったり、収益力であったり、自己資本比率であったりと様々です。これを一概に数値的に計ることはできませんが、ある程度、多くの人が納得する基準というものはあるはずです。

それは、まずその企業の業界におけるポジションのようなもので推察されます。

例えば、私が所属する会計人の業界であれば、そのトップ(税理士や会計士)が経営する事務所の規模、売上、従業員数、歴史、実績、専門性の高さ、顧客数、といったことになるのではないでしょうか。ここに並べた項目は、おおむね、ほかの業種においても同様のことが言えると思います。
その企業が紡いできた歴史や実績が順調に積みあがっていれば、それはそのまま企業としての力量、即ち「企業価値」と呼んでも差し支えないものになるはずです。

一方でそういった「企業価値」をほとんど持たない企業もあります。設立したばかりで歴史などなく、まだ何の実績も上げていない企業です。とはいえ、創業者は何らかの時代に対する目論み、市場に対する期待のようなものがあって起業したことに間違いはありません。今のところ「企業価値」など0に近いものの、将来に対するやる気は旺盛です。

さて、冒頭に書いた「企業の力量」というのは、過去から現在までの話であり積み上げてきたものの総量、ということになります。

これに対して、企業の「将来性」或いは「発展力」となると少し見方は異なってきます。

それは現在から未来への話であり、これから何をどれだけ積み上げていくか、ということになるからです。

ここにおいては、老舗企業も新興企業も条件においては原則フラットということになります。

もちろん、老舗企業が長い時間をかけて積み上げてきたものの価値というのは重要な要素であり、それによって将来への期待値が左右されるということはあり得ない話ではありません。しかしながら、現代は極めて変化の激しい時代です。時代への対応を怠った場合、或いは誤った場合、たちまち老舗企業でも崩壊の危機を迎える、といったことが起こりえるのです。

ここでは大企業は除いて中小企業の場合、将来性への備え、発展するための条件といったものに、どのようなものが考えられるのか検討してみたいと思います。「検討する」と書きましたが、私には「企業の発展力」というテーマに関しては、確信に近いメソッドがありますのでそれをご紹介したいのです。

私の考えでは、「企業の発展力」はその企業の持つ「情報発信力」で決まります。「情報発信」をきちんと実行した企業と、それをまるで怠った企業とでは将来の「発展力」に大きな差が出るのです。これを式に引き直しますと次のようになります。
「現在の企業価値」×「情報発信力」=「企業の発展力」
ということになります。

この掛け算、お分かりになるでしょうか。
老舗企業の企業価値が10点満点の8だとしても「情報発信力」が1だとすれば、「企業の発展力」は以下の数値になります。
「現在の企業価値」(8)×「情報発信力」(1)=「企業の発展力」(8)
一方、新興企業の企業価値が、まだ2だったとしても「情報発信力」が5だとすれば、「企業の発展力」は次のようになり、老舗企業より高い数値になります。
「現在の企業価値」(2)×「情報発信力」(5)=「企業の発展力」(10)

このように、「現在の企業価値」がそれほど高くなくても、その企業がきちんとした「情報発信戦略」を持って、それを継続し続ければ大きな発展を望むことができるのです。一方、「現在の企業価値」がある程度高かったとしても、全く「情報発信」というものを行なわなければ、その企業の発展はそれほど期待できないことになります。実際こういうことが起きているのが、現代企業の置かれている状況なのです。

何故こんなことになるのでしょうか。

それは第一に「存在感を示す」という効果があります。

中小企業の場合、これまで自らの存在を示したくてもそのすべがありませんでした。そもそも強力な営業体制を作ることは難しい話であり、広く広告宣伝を打つには莫大な費用が掛かったからです。しかし、現代は様々な方法を駆使して「企業の存在感」というものを示すことが可能です。インターネットの普及によって、デジタル媒体の選択肢が爆発的に増え、しかもそれを組み合わせたり横展開させることが可能になったのです。これはかつてなかった世界であり、これらの媒体を使わないのは、もったいなさ過ぎる時代と言えましょう。

「情報発信戦略」が有効な第二の理由は、現代が「オープンマインドの時代」ということです。上記のデジタル媒体の場合、その特徴は双方向性ということになります。ここがメディアを使った広告宣伝と大きく違うところです。広告宣伝の場合、その反応はダイレクトではありません。タイムラグがあり、多くの場合間接的なものになります。ところが、「情報発信」はそのレスポンスがリアルタイムであり直接届きます。この点に関しては、「慣れ」がなければ、アナログ世代にはむしろ欠点に感じるかも知れません。しかし、こういった世の中からの「反応」を取り込んでいくしたたかさがあれば、それはプラスの要素になるのです。というより、どんな反応であろうがこれを常にプラスに変えていく、という時代に合った方法論そのものを身につけて行く必要があります。

第三に、「情報発信」そのものが企業力アップにつながる、ということです。

企業がその存在について発信する場合、その内容は、企業の歴史、沿革、エピソードなどのほかに、企業の持っているノウハウであったり、現在の姿勢や考え方であったり、トピックスであったりと様々です。こういったコンテンツを発信するには、それを考えたりまとめたりする必要があります。つまり、これまでやったことのない面倒な作業に取り組まなければならないわけです。私はこれに取り組むプロセスそのものが、企業の成長を生むと考えます。というのは、他者に何かを伝えるということは、その内容を取り入れるだけでなく、咀嚼し、吟味検討し、まとめあげ、表現する、といったプロセスを経なければなりません。この過程でそのコンテンツは、ただ漠然と存在していた時よりも、はるかにはっきりとした形で自分のものになります。この「我がものにする」という、大きな効果が「情報発信」にはあるのです。

こういったいくつかの条件により、「情報発信」を続けることが即ち企業の発展に大きく貢献していくのです。特に新興企業の場合、「情報発信」をしなければ、その存在すら認知してもらえません。しかし、戦略的に「情報発信」を続けていれば、短期間に成長のエンジンを手に入れることが可能になります。それは以下のような理由によるのです。

「情報発信」が効果的な形で継続されていれば、当然、反応や見返りというものが予想されます。「情報発信」は、通常その企業にとってほぼポジティブな情報ばかりを発信しますので、世間のイメージもポジティブなものとなり、実態よりも大きな期待が寄せられるかも知れません。そうなれば、ときに企業の実力を超えたオファーがくる可能性があります。そのとき、そういったチャンスをどう捉えるかです。歯を食いしばってこういったオファーに、なんとか応えることができれば、その企業はたとえ新興企業であっても短期間に大きく成長するでしょう。そういった成長のチャンスがより期待できるのが「情報発信」を怠りなく続けた企業なのです。

「情報発信」というのは、前のめりの積極的かつポジティブな取り組みです。

しかも、老舗企業、新興企業に限らず、現代のビジネスシーンによくマッチした、成長のための極めて効果的な方法論なのです。

現代を生きる企業、特に立地や規模的に不利な地方の中小企業は、この「情報発信」というビジネスツールを大いに活かし、自らの成長につなげてください。