連載コラム MCコラム第40話 バーチャルとリアルの間を埋めるもの ―従来のメディアの役割を見直してみる― Ⅱ
さて、情報発信についても、このリアル店舗を持つということと似たような指摘ができると思います。
ネット上或いはSNS上で経営者が情報発信を続けていくことは極めて意義深く必要な行為である、とこれまで述べてきましたが、それだけでは何か物足りないということです。
それは、SNSは完全にこちらのコントロール下にあり、どんな内容であろうが如何様にでも情報発信できる状況にあるからです。
もちろん、下手なことを書いて「炎上」の危険性がない訳ではありませんが、常識的な線を外すことがなければ、基本的には思うままに自由なことが書けるわけです。
ところが、マスメディアを通すとなるとそうはいきません。放送や発行の前に必ず第3者のチェックが入ります。
それはコンプライアンスを含めた内容のチェックだけではなく、表現等の手直しも含めて他者に伝わりやすいように添削されるのです。つまり、ともすれば主観的に過ぎたかも知れない、こちらサイドの情報発信の質も高めてくれることになります。
第3者の基本的な法務上のチェックと文章の質的グレードアップが図られ、まさに一石二鳥という訳です。
私自身かなり慣れてきたこともあり、例えばFM放送の際などに不適切な表現といったものを使うことはまずありません。とはいえ、ちょっと行き過ぎたかな、といった言葉を使ったときはパーソナリティーがすぐ修正的な表現で言い直してくれますので、「あ、これはまずかったな。」と次から気をつけます。
新聞の連載については、担当の記者さんからいろいろと修正が入ります。法務上問題になるような修正というものはほとんどありませんが、読者に分かりにくいのではないか、という点については的確な指摘を受けます。その点は向こうがプロですので、文章の質が向上することは確かです。
情報発信については極めて使い勝手がよく、気軽に利用できるのがネット、SNSの世界です。これに加えて、リアルな世界の一つである従来のメディアに取り上げられることで、その情報発信に厚みがつくことになります。この「厚み」というのは、「情報の信頼性」と言い換えることもできます。
マスメディアという第3者機関を通過したということは、情報の内容についていわば社会的な承認が成されたということになります。これは情報の受け手側にとって無意識の信頼につながるのではないでしょうか。そういう意味では、従来のメディアはまだまだ人々にとっての情報源として重要な位置を占めているのです。
このように、経営者が行なう情報発信として「地方メディア」を活用することは、いろいろな角度から見てもかなり意義のあることなのです。20年来「地方メディア」とのお付き合いを続けてきた私は、このことを強く実感します。
私が、多くの経営者の皆さんに「地方メディアを利用した情報発信」にチャレンジしていただきたいと思っている所以です。