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連載コラム MCコラム第156話 ハッタリとリアル(実力)の狭間で―「情報発信」によるキャリアの作り方―

私は30数年前、東京は神宮前で友人と起業した会社を経営していたことがあります。

その会社を10年ちょっと経営した後、故郷である鹿児島に帰り、しばらく税理士として地方の中小企業のサポートを生業(なりわい)にしていました(これは現在も続いています。)が、数年前に再び東京で現在のコンサルティング会社を立ち上げて今に至っています。30年前に起業したのは、マーケティングリサーチの会社でした。そこでは、マーケティングに関するかなりの案件をこなした経験を持っているのです。

 

さてその時は、若造が数人で立ち上げた会社でしたので、当たり前の話ですが、誰も我々の存在を知る由もありませんでした。マーケティングに関してはそこそこ自信を持っていましたが、それをどうやって世間に知らしめるかは大きな課題でした。

 

当時はインターネットもメールも、デジタル系に関する媒体は世の中に何も存在していない時代でしたので、我々はとにかく愚直にDM(ダイレクトメール)を出し続けました。ご存知のようにDMのヒット確率は極めて低く、数百社出してようやく1社反応があるかないかといったことを繰り返していたのです。

 

そんな中、ようやくアポの取れた企業に訪問するときは必死でした。

マーケティングリサーチというのはかなり守備範囲が広いので、先方からどんな案件が打診されるかわかりません。

そんなとき、私たちは提示される大抵の案件に対して、それができるかできないか判断する前に「できます。やります。任せてください。」と、返事していました。

 

もちろん、ただそう言っているだけでは説得力がありませんから、「その分野に関しては、トップレベルのノウハウを持っています。」とか「それでしたら僕らの右に出る者はいませんね。」とか「その案件をこなせるのは日本でも僕らだけじゃないですか。」などと、とんでもないハッタリをかませていたのです。

 

そんな、まるで綱渡りのような極めてリスキーな営業でしたが、ある程度様々な案件をこなしているうちに、実際に実力もついてきました。それからは、バブル前夜という時代性もあって、面白いように受注することができたのです。

 

とはいえ、初めて受注した大きな案件は、我々の実力をはるかに超えるような難しいテーマでした。しかし、受けてしまったものは仕方がありません。7,8人の会社でしたが、みんなで鬼のように頑張ってなんとか納品したのです。そのレポートは、思っていた以上にクライアントの評価が高く、その後、レギュラーで様々な案件を発注してくれるようになりました。

 

さて、ここで申し上げたいのは「情報発信」と受注の関係です。当時は今に比べて、SNSもなければメディアを利用したわけでもないので、DMという極めてアナログかつ非効率な方法のみで「情報発信」していたことになります。

 

DMの内容は、「マーケティングに関してはハイレベルかつ広範なノウハウを持っています。お困りの案件があったら任せてください。」といった、そもそもがハッタリを効かしたようなものでした。そうしなければ、受注などできないと思っていたので、随分乱暴な営業をかけていたのです。先方は、当然多少怪しいなと思っても、困っている懸案事項などあれば連絡してきました。

 

ただ先述のように、我々は、受けた案件について極めて良心的に必死でこなすということだけは、愚直に守っていました。先方の期待に応えなければ、というのは我々の共有事項だったのです。というよりは、「期待以上のものを出して驚かせてやろう。」くらいの気持ちで、受注案件に当たっていました。そうやって納品した案件、1件ごとに私たちは成長していたような気がします。そしてそのことが次の受注につながったのです。

 

同じことが現在も言えるのではないでしょうか。

いろいろな形で「情報発信」を続けていれば、こちらの実態以上に評価される可能性が出てきます。

「情報発信」では、直接商材やサービスといったものを売りこむ広告宣伝と違って、やや膨らみを持たせて我が社のイメージや姿勢、考え方といったものを世間に発信していきます。基本、ネガティブな情報は出しませんので、どちらかといえばプラスの印象しか世間に与えないことになります。

 

そうすると、やや大きめの期待を持って「返り」が出てくる可能性が出てくるのです。

そうなったときにこれをどう捉えるか、です。わが社の力量を超えるようなオファーがあったとき、或いは想定外の案件を打診されたときどうするか、です。

「情報発信」にはそういった期待と危険性の両方があるのです。

 

前述のように、私は、昔そんな打診があったとき、当時の仲間とともに果敢に挑みました。そして、かなり短い時間でマーケティングのノウハウを身につけることができたのです。「情報発信」を続けていると、期せずしてそういう案件に遭遇する可能性が出てきます。

その時、その案件に背中を見せずに、何とか頑張って挑戦し、それをこなすことができれば短期間に飛躍的に成長する可能性が出てくるのです。

 

正直言ってこれは、誰にでもお勧めできる手法ではありません。かなり前向きでチャレンジングな性格や志向がなければリスキーなやり方でもあります。世の中には、堅実な仕事を確実にコツコツとこなすのを得意としている人もいるでしょう。そういうタイプの人はそれでいいと私は思います。

 

しかし経営者であれば、どこかで大きくチャレンジしなければならない場面というのは必ずめぐってくるものです。

そこで果敢に挑むのか、回避するのかでその後の事業人生は変わってくるのではないでしょうか。

私は、「情報発信」がもたらす可能性のある、力量を超えたチャレンジングな案件を、是非とも臆することなく迎え撃ってもらいたいと思っています。