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連載コラム MCコラム第267話 「専門レベル」では追いつかない時代―今求められるのは「応用レベル」―  

 

 

 

我々は通常、専門性を提供することでビジネスを成り立たせています。私の場合、会計事務所のトップとして税務会計の専門性、またコンサルタントとしては情報発信分野の専門性、といったものを提供しています。

 

 

特に税務会計の専門性の場合、その専門レベルと一般の知識レベルとの差異が、報酬としてカウントされ支払われることになります。

昔は、とりわけ中小企業の経営者に税務会計の知識が乏しく、専門レベルとの差異が大きかったために、そこで支払われる報酬はそれなりの金額だったことになります。

しかしその後、大学進学率が上がるなどの全体的な教育水準や社会的インフラなどが整備されてきたことによって、一般知識レベルが向上し、この差異が急速に縮まってきました。

専門性といっても、昔と同じレベルのものを提供していたのでは、以前のような報酬を支払ってもらうことが困難になってきたのです。

業界内の過当競争的な事情も手伝って、現状そうなっています。

ただ、税務会計のニーズが著しく減少したかというとそうではなく、この分野を取り巻く環境はますます複雑になっているために、ある意味高度な専門性のニーズはますます高まっている、と見ることもできます。

 

 

この点は、他の産業分野においても同様の事情があるのではないかと思います。

様々な専門知識にアプローチする手段が格段に整備された現在、ちょっとした専門性であれば、簡単に検索可能な世の中になりました。

つまり、ありきたりの専門性では、人が報酬を払ってくれない時代になったのです。

では「専門性」という世界そのものが否定されているのか、といえばそうではなく、前述のように、より高度な「専門性」を世間は要求し始めているのです。

つまり、世間の標準レベルがかさ上げしてきている分、その道の専門家もより自らの専門性のレベルを上げていかなければ評価されない時代になったのです。

 

 

ただここで一つ問題があります。

それは、その「専門性」というものの解釈をどうするか、ということです。

不思議なことを言うなあ、と思われるかも知れません。「ひたすらピュアに自分の専門的な知識やスキルを上げれば、それでいいんじゃないの?」と思われるのではないでしょうか。そう思われたとしても無理はありません。

しかし、ここでさらに一つの疑問が生じます。

世間一般のニーズが、そこまで一つの分野の専門レベルを日常的に必要とするか、ということです。

或いは、そんなにピンポイントのレアケースが発生するか、ということです。

 

 

私の専門でいえば税務の問題で極めて難しいレアなケースというのは、そんなに起こり得るものではありません。通常問題になるのは、税務のことだけではなく、資金繰りであったり、経費の削減であったり、或いはこれらが重なりあう問題、さらに経営計画など経営全般に関する様々なケースです。

こういったやや広めの課題に向き合うためには、ひたすら突き詰めた一つの専門性の高さというよりも、周辺の専門性とのタイムリーな組み合わせの方がニーズが高いといえましょう。

それは例えば、弁護士や司法書士、或いは社会保険労務士などとのコラボによって問題を解決する場合もあります。問題の内容次第によっては、コンサルタントとのコラボということも考えられます。

この場合、私に必要な専門性というのは、ただただ税に関する専門知識ではなく、どう組み合わせれば問題が解決するかという、経営問題処理能力の専門性ということになります。

これは、ただ税務の知識やスキルが高ければ解決する、というものではありません。

別の言い方をすれば、特定の技術とか法律とか税務とか、何か一つの分野における専門性の高さは、単なる知識や情報の「量的な優位性」といえます。

 

 

しかし、上記のように、その知識を応用し組み合わせることで複雑な問題を解決する、というレベルまで持っていければそれは単なる「量的な優位性」とは言えなくなります。

それは他では替えの効かない「質的な優位性」を示したことになるのです。

もはや専門分野におけるシンプルな「量的な優位性」だけでは評価されない時代になりました。

専門性をさらに応用した「質的な優位性」を確保しなければ評価の代償としての報酬をいただけない時代になったのです。

 

 

ただこういう現実を明確に自覚している専門家はまだ少数派です。多くの専門家が、これまでの専門分野で何とか食えないものか、と保守的になっています。それは、こういった変化の波が大きすぎるために、にわかには受け入れがたい、と腰が引けているからにほかなりません。これからは、「知識の量」とか「情報の量」とかいった測定可能な「量的な優位性」だけでは食えない時代に入っていきます。

簡単には計測できない「質的な優位性」を確保できたビジネスだけが勝ち残っていくと考えられるのです。

 

 

しかしここで一つ問題なのは、普通世間も「量的な優位性」しか見ていない、ということです。

例えば会計事務所であれば、会計や税務の専門性しか世間は期待しないでしょう。そこから範囲を広げて、隣接する分野まで取り込んで問題を解決してくれるなどとは考えていません。それは、こちらにも責任があります。

通常、専門分野における「量的な優位性」しか発信してきていないので、世間に伝わりようがないのです。

 

 

したがって、自らの事業を「質的な優位性」を持つほかにないレベルの業態に仕上げたならば、そのことを「情報発信(アウトプット)」する必要があります。

そこをアピールしていかなければ、いつまでもシンプルな「量的な優位性」だけの専門家としてしか世間は見てくれないことになります。

現代のビジネス事情は様々な枠を超えて複雑化しています。そこで発生する問題に対応できるだけの「質的な優位性」を持っているというスタンスについては、あえて「情報発信(アウトプット)」してでも知らせる必要があるのです。

ビジネスにおける「質的な優位性」の確保とそのことの「情報発信(アウトプット)」、この二つは今後欠かせない経営上のコンテンツとして、広く認識されるようになっていくでしょう。